紅茶スパイ: 英国人プラントハンター中国をゆく

  • 原書房 (2011年12月1日発売)
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感想 : 50
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先に読んだ『仕事に効く教養としての「世界史」』の中で、関連する書籍が何冊か紹介されていました。
その中で特に、「面白そうだな」と感じて書店で探したのが、この作品です。
テーマは「お茶」、時代は19世紀の半ば。
インドの阿片を中国に輸出し、中国の茶を輸入していたイギリス。
この貿易で莫大な富を得ていたイギリスですが、中国との関係は悪化し、「アヘン戦争」へと発展します。
高いお金を払って、敵国から茶を購入することをやめたい、イギリス。
しかし茶の樹、および緑茶・紅茶の製法は、中国の機密として門外不出となっていました。
この状況を打開しようとしたイギリスが中国に送り込んだのが、「プラントハンター」ロバート・フォーチューン。
沿岸部以外にヨーロッパ人が入り込んだことがない中国に潜入し、茶の樹とお茶の製法を入手することを命じられたフォーチューン。
その歴史的な背景と、フォーチューンの活躍が描かれた、ノンフィクションです。
中国の不安定な治安の中で、目立つ姿をした外国人が潜入する危険。
時には活劇的に、フォーチューンの道筋が描写されています。
そして陸送と船しかなかった時代に、植物である茶を運搬することの困難。
お茶の世界的な流通に、このような経緯があったとは、知りませんでした。
そして21世紀の今もなお、紅茶の名産地として真っ先にインドが挙げられる理由も、本書を読んで始めて、理解することが出来ました。
ノンフィクションという分類なのですが、中国国内での旅の描写など、小説として読んでも十分、楽しめる内容になっています。
書店で置かれていたのが、普段あまり立ち入らない、料理本・食材本のコーナー。
「出会うことができてよかったなあ」と、しみじみ感じた一冊でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2014年11月12日
読了日 : 2014年11月12日
本棚登録日 : 2014年11月12日

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