私の文学放浪 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社 (2004年1月10日発売)
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感想 : 1

底の浅い誠実さ、軍国主義、マルクス主義、懐疑のための懐疑、などなどに対する、吉行淳之介の違和感はしごくまっとうなもので、とても納得出来る。と同時に、世間で正しいとされていることとか、支配的な価値観とか、そういうものに潜む嘘を見抜くことはとても難しくて、違和感を持ったとしてもそれをひとり孤独に持ち続けていくことの厳しさ困難さというものも、なんとなく想像がつく。わたしが吉行的知性を持っているかどうかは別として。だから、こういう違和感を中学生のころからきちんと持ってられた吉行淳之介は本当にすごいと思うし、しかも時代は戦時下、ファシズムと軍国主義が吹き荒れるなかで自分をまともに保つというのは、きっと現代のわたしには想像もできないほど大変なことで、それだけでたとえ吉行淳之介が文学者として地位を確立していなくとも尊敬に値する。ユーモアと単純明快さを好む吉行淳之介の感性もとても好き。村上春樹が吉行淳之介を(第三の新人を)評価する理由がすこしわかったかもしれない。あと第三の新人の仲良しな感じ、文壇的交流が楽しそうでいいなあ、文学的青春ってすばらしいなあ、っておもった。うらやましいものです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年7月16日
読了日 : 2013年7月16日
本棚登録日 : 2013年7月12日

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