湯を沸かすほどの熱い愛、のちょっとふざけたタイトルからゆるい気持ちで見たところから失敗だった。
銭湯「幸の湯」は、父(一浩/オダギリジョー)が一年前に出奔し、閉店状態。母(双葉/宮沢りえ)は、娘の安澄(杉咲花)と二人で暮らしている。
「湯気のごとく、店主が蒸発しました。」
で、はじまり、見ているこっちの気持ちを更に弛めさせられる。
ところが、物語はどんどん重たいテーマをほうり込んでくる。まず双葉自身には、余命宣告というタイムリミットが。でも彼女には、死ぬまでにするべきことがある。
ここから双葉とその家族の四苦八苦ぶりが凄まじい。双葉を取り巻く家族の全員が思い通りにならなかった過去と現在を抱えており、尽きることのない苦しみの連続となる。
ここでゆるい気持ちは、大きく落とされる。
それを双葉は、聖母マリアのごとく(+肝っ玉かあちゃん)、人徳を持って苦しみを慈愛に変えてゆく。この繰り返しで、ゆるい気持ちは、荒波の船のごとく上下に揺さぶられ、えらいことになります。
そして死を前に双葉も、人間としての一面を垣間見せるが‥
物語で天国というキーワードが出てくる。しかし悩みのない天国は、双葉にとって幸せなのか?双葉は体と心をいっぱいに使って、家族を感じて、愛していたから。家族の出した「幸福」の答えとは‥(幸の湯もそこから?)
出演者の演技がとてもよかった。そして物語の頭からお尻まで、さまざまな演出が盛り込まれていて、何度見返しても面白い作品だと思いました。
ああ、銭湯にいこう。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年3月22日
- 読了日 : 2021年3月21日
- 本棚登録日 : 2021年3月21日
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