クイア・スタディーズ (思考のフロンティア)

著者 :
  • 岩波書店 (2003年12月18日発売)
3.81
  • (8)
  • (14)
  • (13)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 157
感想 : 6
3

【版元】
非異性愛者を差別・抑圧することで,わたしたちの社会はなにを得ようとしてきたのだろうか.その事実に〈学問〉はどのように関わってきたのか.これまでの〈規範〉に徹底抗戦するクイア・スタディーズの可能性に寄り添いながら,異性愛主義によって侵食されたセクシュアリティの現況を考察し,新たな性と生のあり方を探る.

■著者からのメッセージ
 「クイア」概念や実践は,規範に抵抗する者にとって,約束の地を与えてくれるものではない.むしろ,規範によって自己や集団の統一性が保障されているとするならば,規範に対し徹底的に抗うことは,自己や集団そのものの統一性を崩壊させるような「危険」に身をさらすことにもなる.切った刀で自分自身をも切りつけてしまう「危険性」をクイアの思想ははらんでいる.したがって,このような考え方は,マイノリティの自己正当化の思想ではないし,解放主義的な運動の文脈における〈解放〉という考え方がもつ,あらかじめ措定された最終目標に向かう政治的使命にもなじまない.1970年代以降の解放主義的な運動に見られるように,同性愛者の〈解放〉という論理,すなわち「自由」や「平等」という目標や達成地点を見出そうとする方向性のなかで,同性愛者にとっての非在郷を探しつづけるという「危うさ」と先に述べた自己(の統一性の)崩壊の「危険性」,そのどちらを選択するのかというときに,わたしはあえて後者を選択する判断もありだと考える.(「まえがき」 p. vi)
https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b257302.html


【目次】
はじめに [iii-x]
目次 [xi-xii]

I レズビアン/ゲイ・スタディーズからクイア・スタディーズへ――欲望の理論と理論の欲望 001

第1章 レズビアン/ゲイ・スタディーズ前史 001
1 同性愛解放運動の黎明期――ドイツにおける同性愛の「犯罪化」と「病理化」 001
2 ホモファイル運動 008

第2章 レズビアン/ゲイ・スタディーズ 017
1 ストーンウォール暴動 017
2 ゲイ解放運動 020
3 同性愛――抑圧と解放 023
4 ホモファビアとヘテロセクシズム 029
5 レズビアン・フェミニズム 031
6 「エスニック・モデル」化する同性愛 039
7 セクシュアリティ 042

第3章 クイア・スタディーズ 051
1 クイア理論/研究を取りまく背景 051
2 同性愛者,レズビアン/ゲイ,クイア 054
3 「クイア理論」の台頭 056
4 深刻化するエイズ問題 059
5 クイア・アイデンティティ 062

II クイア・スタディーズという視角 067

第1章 クイア化する「家族」 067
1 非異性愛「家族」の形成 067
2 クイア「家族」は近代家族を超えるのか――「家族」から零れ落ちる「家族」 078
3 抑圧する「家族」 081
4 選択する「家族」 091

第2章 資本の欲望とゲイのライフスタイル 094
1 同性愛者の人権をめぐる二つの事例 094
2 資本主義とゲイ・アイデンティティ 097
3 ゲイのライフスタイルと消費 100

III 基本文献案内 115
  レズビアン/ゲイ・スタディーズ前史  レズビアン/ゲイ・スタディーズ  クイア・スタディーズ  歴史  論集  クイア化する家族  資本の欲望とゲイのライフスタイル  翻訳以外の日本語文献

あとがき(2003年晩秋 河口和也) [127-130]

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 367.家・性・老
感想投稿日 : 2018年11月2日
読了日 : 2018年11月14日
本棚登録日 : 2018年11月2日

みんなの感想をみる

ツイートする