【書誌情報+内容紹介】
『教育と平等――大衆教育社会はいかに生成したか』
著者:苅谷 剛彦[かりや・たけひこ] 教育社会学。
初版刊行日:2009/6/25
判型:新書判
ページ数:264
定価:本体840円(税別)
ISBN:978-4-12-102006-2
戦後教育において「平等」はどのように考えられてきたのだろうか。本書が注目するのは、義務教育費の配分と日本的な平等主義のプロセスである。そのきわめて特異な背景には、戦前からの地方財政の逼迫と戦後の人口動態、アメリカから流入した「新教育」思想とが複雑に絡み合っていた。セーフティネットとしての役割を維持してきたこの「戦後レジーム」がなぜ崩壊しつつあるのか、その原点を探る。
〈https://www.chuko.co.jp/shinsho/2009/06/102006.html〉
【簡易目次】
プロローグ 平等神話の解読 003
第一章 対立の構図と問題の底流 015
第ニ章 戦前のトラウマと源流としてのアメリカ 056
第三章 設計図はいかに描かれたか 104
第四章 「面の平等」と知られざる革命 147
第五章 標準化のアンビバレンス 207
エピローグ 屈折する視線――個人と個性の錯視 268
【目次】
目次 [i-vi]
プロローグ 平等神話の解読 003
註 014
第一章 対立の構図と問題の底流 015
物語のはじまり
なぜ昭和三十年代か
1 「逆コース」の意味 018
見解の相違
文部省「対」日教組
国家による統制
文部省の言い分
左から右へ
2 六三制という大実験 030
地域間の教育格差
教育条件の格差――教育費・教員構成と学力
教育課程の多様性
3 左右の対立を超えた問題認識 042
新教育と学習離れ
教育格差をいかにして縮小するか
註 055
第ニ章 戦前のトラウマと源流としてのアメリカ 056
1 戦前の教育費配分 057
困窮する地方財政
教育の機会均等と教育財政の仕組み
教員処遇の格差
2 解決の方途 070
教員単位(teacher unit)
学制発布以来最大の問題
3 アメリカの源流――科学的経営革命 075
世紀の変わり目
教育施設の画一的保障
財政格差をどう是正するか
ユニットコストのテクノロジー
生徒時間(pupil hour)
4 学習の個人化と教育財政のロジック 091
学校中心主義から子ども中心主義へ
個人としての学習者
アメリカにおけるその後の展開
註 103
第三章 設計図はいかに描かれたか 104
1 戦後の再出発 104
義務教育の制度化
文部省の認識
アメリカの影響
2 戦後の要請 111
教育財政の独立
等量等質の教育環境
最低学校基準
3 標準法の世界――日本的な平等へのアプローチ 122
暗黙の前提
三本立ての算定方式パーヘッド(一人頭)の世界
人口動態というもう一つの条件
定員実額制
次善の策
註 144
第四章 「面の平等」と知られざる革命 147
1 教育財政の推移と地域間格差 148
「標準法」以前の世界
公的投資の増大
教育費の配分構造の変化
累進的構造のもつ意味
2 「知られざる革命」―― 教育条件の均質化 161
競員一人あたりの児童生徒数
教員定数の改善
思わざる結果
3 「面の平等」――さらなる均質化へ 178
「へき地」の実態
配分の基準
教員の広域人事
静岡県の場合
岐阜県の場合 福島県の場合
地方分権の空洞化
下からの強い意志
註 203
第五章 標準化のアンビバレンス 207
1 全国一斉学力調査とその再分析 207
調査の実施
学テ闘争の意味
勤務評定との結びつき
なぜ標準化は止まらなかったか
何を共通の尺度とするか
教材基準の設定
2 「学力」との関係 228
学力「ランキング」の変化
豊かさと学力
「卓越と平等」の達成?
3 面の平等とそのアンビバレンス 242
均一空間の創出
標準化のパラドクス
能力主義的差別と格差縮小への寄与
「学級」――面の平等のテクノロジー
共同体の秩序
高校入試という「競争」
大衆教育社会の基底
註 266
エピローグ 屈折する視線――個人と個性の錯視 268
批判対象としての分かりやすさ
自立した個人はどうしたら生まれるか
大衆教育社会の功と罪
註 281
あとがき(二〇〇九年六月 苅谷 剛彦) [282-286]
引用・参考文献 [287-290]
- 感想投稿日 : 2019年12月8日
- 本棚登録日 : 2018年5月12日
みんなの感想をみる