写本の文化誌:ヨーロッパ中世の文学とメディア

  • 白水社 (2017年7月22日発売)
3.89
  • (5)
  • (9)
  • (4)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 169
感想 : 10

著者:クラウディア・ブリンカー・フォン・デア・ハイデ
訳者:一條麻美子
3,300円+税
出版年月日:2017/07/21
ISBN:9784560095591
4-6 288ページ

本が手書き一点物だった時代の書籍文化誌
材料の調達から作品の政治的意味までを語る

 写本製作にあたり注文主が、作者が、書記が、各種職人が果たした役割や、できあがった写本がもった政治的意味、さらに傑作「マネッセ写本」を生み出した文芸マネージメントまで、写本をめぐる文化活動をわかりやすく解説する。
 巻物から冊子体のいわゆる写本へ主流が移ったヨーロッパ中世の始まり、それはデジタル時代・活字印刷の誕生と並ぶメディアの革新、つまり口述から書記への転換の始まりでもあった。本書は、物としての写本の材料と作られ方、製作にかかわった注文主・詩人や知識人・修道士や職業書記らの実態から、手にした人が本をどう読んだか、本と書かれたテキストの双方がもった政治的役割まで、当時の社会における本と、本をめぐる文化・社会的状況を、さまざまな角度から解説する。
 なかでも、一種の文芸マネージメントから生まれた傑作・マネッセ写本についての、成立背景を含めた製作過程や、その後の数奇な運命とドイツ史とのかかわりの情報は、これまで詳しく紹介されたことがなく、またミステリのようにおもしろい。
 「人の心臓より尊い」と言われた羊皮紙の世界、書記が一日に書ける分量と与えられた物質的・精神的報酬、仕事に対する書記のプライドや不満が書き込まれた挿絵や奥付、写本の窃盗事件あれこれ……。
 物としての写本とメディアとしての写本をめぐる一冊。

http://www.hakusuisha.co.jp/smp/book/b288150.html


【目次】
序 

第一章 本ができあがるまで 
 1 材料の調達 
 2 書く・描く 
 3 写本製作の場 
 4 書記 
 5 本の外見 
 6 写本の値段 
 7 保管とアーカイブ化 
 8 印刷術という革命 

第二章 注文製作 
 1 文学の中心地 
 2 文学愛好家とパトロン 
 3 文学マネージメント──マネッセ写本 
 4 愛書家──ある十五世紀貴族の図書室 

第三章 本と読者 
 1 聞く・読む 
 2 身体としての本 
 3 五感と読書 

第四章 作者とテキスト 
 1 詩人──匿名・自己演出・歴史性 
 2 作品──伝承・言語・文学概念 

訳者あとがき
参考文献
書名・人名リスト
注と典拠
索引 

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 389.文化人類学
感想投稿日 : 2017年7月15日
本棚登録日 : 2017年7月15日

みんなの感想をみる

ツイートする