文化と実践―心の本質的社会性を問う

制作 : 石黒広昭  亀田達也 
  • 新曜社 (2010年1月5日発売)
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 文化心理学を勉強するため手に取った。


【書誌情報】
四六判290頁
定価:本体2900円+税
発売日 2010.1.5
ISBN 978-4-7885-1186-6

◆心は頭の中にあるのではない◆
 折しも、脳ブームです。心は、一人ひとりの頭の中にあると思っていませんか。 しかし脳は、人間の社会的活動なしに、現在の脳を生み出しえたでしょうか? 伝統的に心理学は、個人の心ばかりを研究し、文化や民族性など、文化的な所 産としての心の研究はないがしろにされてきました。しかし今、大きく変わろ うとしています。この本は、日本を代表する六人の心理学者の競演です。心を 社会的に生み出されるものとして捉えながらも立場を異にする三人の心理学者 が自らの考えを開陳し、さらに別の三人がそれを批判的に検討するという構成 です。硬派な本ですが、スリリングな議論が楽しめること請け合いです。編者 の他、執筆者は山岸俊男、石井敬子、佐伯胖、北山忍の各氏。
https://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/978-4-7885-1186-6.htm

【目次】
目次 [i-ix]

序章 文化と実践を問う[石黒広昭・亀田達也] 001
1 心の本質的社会性 001
2 本書成立の背景 003
  ◇北大COEプログラム
  ◇心の生物学的基盤
  ◇心の文化的基盤
3 本書の構成 009
4 文化をめぐる「現実的問題」にむけて 011

第I部 文化と実践 三つのアプローチ 
第1章 文化への制度アプローチ  [山岸俊男] 015
はじめに 
1 心と文化の相互構成 
2 信念と規範 
3 ペン選択実験 
4 すき焼きの最後の一切れの肉としてのペン選択 
5 デフォルト戦略 
6 ペン選択シナリオ実験 
  ◇三つのシナリオ
  ◇自分は個人的には同調を望ましいとは思わないが、他人は望ましいと思っていると思う
  ◇状況のデフォルト性をなくすと、ペン選択の日米差は消え去った
  ◇実際のペン選択も他人の目により変化する
7 自己高揚と自己卑下の文化差 
  ◇自分の能力を正確に判断できたら報酬を差し上げます
  ◇デフォルト戦略の使用を抑制すると
8 行動が重要 
9 行動が生み出す均衡としての制度
10 誘因(インセンティブ)の社会的定義
11 誘因の自己維持システム
12 集団主義的制度
13 自己維持的共有信念システムとしての制度
14 「教室のピグマリオン」と黒人差別
15 マグリブとジェノア
16 制度としての集団主義と個人主義
17 結論 

第2章 文化と認知 文化心理学的アプローチ  [石井敬子] 063
はじめに 
1 文化の定義 
2 文化と心性の関係性 
3 文化心理学的アプローチ 
4 文化的自己観 
5 コミュニケーションの慣習と思考様式 
6 言語と思考 
7 実証研究の選択的レビュー 
  ◇注意配分
  ◇推論
  ◇カテゴリー化
  ◇発話の情報処理
8 文化心理学的アプローチおよびそれに批判的なアプローチにおける問題点 
  ◇社会・文化環境に関する前提――「経済的」か「心理的」か
  ◇文化内の分散
9 今後の展望 

第3章 実践としての文化 文化に対する社会歴史的アプローチ  [石黒広昭] 107
1 文化とは何か 
  ◇「文化的」エピソード
  ◇文化の定義
2 媒介された協働過程 
  ◇媒介された行為
  ◇社会システムとしての協働空間
  ◇文化の学習過程
3 文化的学習空間の局地性
4 思考の文化差
  ◇ディスコース
  ◇リテラシーと思考
  ◇認知過程の社会歴史的制約
5 媒介する一式の道具
  ◇所有メタファー
  ◇異種混淆性
  ◇授業の中の複数の声
6 文化はどこにあるのか 
  ◇変数としての文化
  ◇文化概念の脆弱性
7 文化の創造 
  ◇持続可能な実践
  ◇文化の交差と創造
8 文化と実践をめぐる語り 


第II部 三論文へのコメント
第4章 「適応」か、「相互構成」か、「参加」か  [佐伯胖] 161
はじめに 
1 三論文へのコメント 
  ◇各論文のキーワード
  ◇山岸論文へのコメント
  ◇石井論文へのコメント
  ◇石黒論文へのコメント
2 文化と実践――佐伯の文化的実践論 
  ◇文化的実践とは何か
  ◇「理解」は「作品」なり
  ◇「よさ」の鑑賞
  ◇LPPとの関係

第5章 社会歴史的アプローチ、実践の共同体、および“ヒト‐人”問題をめぐって――石黒論文を中心とするコメント[亀田達也] 185
はじめに 
1 社会歴史的アプローチの特質 
  ◇コメント1 “文化”は主に人間の領域に属するのか、ヒトの領域にも属するのか?
  ◇コメント2 “文化”を持続させるエンジンは何か? 変化の契機を生むものは何か?
2 結論

第6章 社会・行動科学のフロンティア 新たな開拓史にむけて  [北山忍] 199
はじめに 
1 スクリプト化された行動パターン 三論文に共通する鍵概念 
  ◇制度・意味・実践
  ◇山岸の制度 結局は対人期待のこと
  ◇石井の意味 行動パターンとしてのスキーマ概念
  ◇石黒の実践 行動パターンとしての実践
2 文化的慣習と心理プロセスの相互構成過程 
  ◇文化課題理論
  ◇社会的に分散された暗黙の心理傾向
  ◇三論文の相関関係 なぜすべての観点が必要なのか
  ◇暗黙の心理傾向と明示的な価値観 特に日本に注目して
3 いくつかの理論的・実証的問題 
  ◇暗黙の心理傾向 石黒と山岸は、なぜ否定しようとするのか
  ◇文化慣習の起源 ゲーム論的文化論の可能性
  ◇北海道の特異性
  ◇巨視的文化比較の重要性 念のために…
4 結論 

あとがき(編者を代表して 石黒広昭) [245-248]

引用文献 [7-26]
事項索引 [4-6]
人名索引 [1-3]

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  361.4 社会心理学
感想投稿日 : 2018年11月16日
読了日 : 2018年11月30日
本棚登録日 : 2018年7月25日

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