彼女の正しい名前とは何か: 第三世界フェミニズムの思想

著者 :
  • 青土社 (2000年9月1日発売)
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著者:岡真理(現代アラブ文学)
装丁:菊地信義

【版元】
定価 本体2400+税
発売日 2000年9月
ISBN 4-7917-5841-2

  「他者」の呼びかけに応えるために  西洋フェミニズムの「普遍的正義」の裏に、異なる文化への差別意識がひそんではいないか――。女性であり、かつ植民地主義の加害者の側に位置することを引き受け、「他者」を一方的に語ることの暴力性を凝視しながら、ことばと名前を奪われた人びとに応答する道をさぐる、大胆にして繊細な文化の政治学。

  岡真理(おか・まり)
1960年生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。カイロ大学留学、在モロッコ日本大使館専門調査員、大阪女子大学専任講師などを経て、現在、京都大学教員。専攻は現代アラブ文学/第三世界フェミニズム思想。著書に 『棗椰子の木陰で』(青土社)『記憶/物語』(岩波書店)などがある。
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=994


【メモ】
・巻末にある[初出誌一覧]の抜き書きです。

彼女の「正しい」名前とは何か  『現代思想』一九九九年一月
序章付記  書き下ろし
「第三世界」と「西洋フェミニズム」  「現代思想』一九九六年五月(前半)
カヴァリング・ウーマン、あるいは女性報道  『現代思想』一九九五年三月
「女性割礼」という陥穽、あるいはフライデイの口  『現代思想』一九九六年五月(後半)
第I部付記  書き下ろし 
「文化」をどこから語るか  『インパクション』一九九六年一〇月
「グローバル・フェミニズム」の無知 『インパクション』一九九七年二月
置き換えられた女たち  『現代詩手帖』一九九七年三月
第Ⅱ部付記  『現代思想』二〇〇〇年二月増刊
蟹の虚ろなまなざし、あるいはフライデイの旋回  『現代思想』一九九六年一二月
Becoming a witness  『現代思想』一九九七年九月
転がるカボチャ、あるいは応答するということ  『現代思想』一九九七年三月
第Ⅲ部付記  書き下ろし
「他者」の存在を想い出すこと  『みすず』一九九八年九月(大幅加筆)


【目次】
目次 [001-004]

序章 彼女の「正しい」名前とは何か 007
  ある 「出会い損ね」 をめぐって 
  オリエンタリズムと二重のジェンダー化 
  女性であること、パレスチナ人であること 
  「サバルタン」 と表象の暴力

序章付記 他者の「名」を呼ぶ、ということ 033

  I 「第三世界フェミニズム」 とは何か 

1.1 「第三世界」と「西洋フェミニズム」 039
  「西洋フェミニズム」の罠 
  第三世界の第三世界化
  「先進的」 世界の野蛮さ

1.2 カヴァリング・ウーマン、あるいは女性報道 061
  「支配」としてのクリシェ
  語られる女たち
  二重のプロジェクト
  ホスケンによる「女性割礼」批判の植民地主義
  「抑圧的なイスラーム」という抑圧的言説 
  「ことば」を聞き分けること

1.3 「女性割礼」 という陥穽、あるいはフライデイの口 089
  他者を物語ること
  自らの身体をめぐる抵抗
  アリス・ウォーカー『喜びの秘密』の没歴史性
  記号化される女性と抵抗の「文化」
  他者に代わって語ることへの禁欲
  フライデイ/ショアー ――表象不能の真実

第I部付記 文化という抵抗、あるいは抵抗という文化 127


  II 発話の位置の政治学 

2.1 「文化」をどこから語るか 143
  「ニュートラルな語り」は存在するか
  「『ナヌムの家』は日本人を糾弾してはいない」?
  「女性割礼は文化ではない」?

2.2 「グローバル・フェミニズム」の無知 155
  「普遍的人権主義」は普遍的か
  私たちは何を知らないのか
  「同じ女」であるということ
  自己の加害性を問わずに「連帯」は語れるか

2.3 置き換えられた女たち 第三世界の女のエクリチュール ――トリン・T・ミンハを中心に 171
  「第三世界の女のエクリチュール」と私たちの視線
  位置を明確に意識しながら、差異を生みつづけること
  置き換え=移動の戦略の可能性と危険性
  他者にとどく声をもつ者ともたない者

第II部付記 ポジショナリティ 189


  III 責任=応答可能性[レスポンシビリティ]
3.1 蟹の虚ろなまなざし、あるいはフライデイの旋回 199
  なぜ刑事は引き金を引いたのか
  被害者としての同一化
  空虚さの回避
  フライデイとともに
  秘められた声

3.2  Becoming a Witness ――出来事の分有「共感」のポリティクス 221
  二つの「共感」
  「慰安婦」への共感と国家への共感
  他者の苦痛に同化すること
  アーレント――他者の苦しみの証人となること
  非力さにおける共感

3.3 転がるカボチャ、あるいは応答するということ 231
  小説という形式の植民地主義的欲望
  カナファーニーとパレスチナ難民の実践的関係
  テクストの誤配、そして対価なき応答としての贈与
  不意うちのメッセージ
  呼びかけられた者が書く主体になること
  『ナヌムの家2』――「撮る/撮られる」関係の転倒 

第III部付記 〈出来事〉の共振 267

終章 「他者」 の存在を想い出すこと 275

あとがき(二〇〇〇年八月 岡 真理) [305-309]
初出誌一覧 [310]
引用文献 [311-317]

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 西・中央アジア
感想投稿日 : 2015年2月12日
読了日 : 2018年11月13日
本棚登録日 : 2013年8月29日

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