花のれん (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1961年8月17日発売)
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感想 : 136
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 花のれん。

 古き時代の心かよわき女性が、旦那の度重なる失態に呆れながらも、三行半をしたためることはせず、旦那を健気に信じ、共に商いを営んできた。
 人との出会い、繋がり、絆。そのすべてを商売に賭け、自分の人生をも担保にした主人公は、自分が決意した幕引きを遂げた。
 幸せだっただろう。商売繁盛、一世風靡、時の大阪で大円団を築いたのだから。けれど、満たされるどころか、虚無と不乱の入り混じる感情の中で、一人ぽっちだったのではなかっただろうか。

 そよ風にたなびく、藍染を白抜きし、季節の花を散りばめた花のれんをくぐる、白い喪服を羽織った女性。
 脇目も振らず歩いていく。
 その目は、表情は、誰にも見えない。
 けれどきっと、その先で待ってくれている誰かを夢見て、少女のように爛々としていると思う。

 「花のれん」は、はっきり言えば切ない物語りだった。だけど、紆余曲折、波瀾万丈の人生も、主人公からしてみれば、百花繚乱にきらめいていたのではと、私は思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年9月17日
読了日 : 2023年9月17日
本棚登録日 : 2023年8月21日

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