ピーター・パン・シンドローム

  • 祥伝社 (1984年1月1日発売)
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感想 : 6
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面白かった!原著は1983年、当時のアメリカに「大量に出現した」未熟な男たちという現象について書かれた本だが、現代でも全く古くなってない。

訳は小此木啓吾。『モラトリアム人間』に似ている本がある、と翻訳が回ってきたとのこと。
『モラトリアム人間』を読んだのがはるか昔なので、その一致度や差異などはコメントしかねるが…。

「ピーター・パン症候群」とは、無責任・不安・孤独・性役割の葛藤の4つの基本症状の上に、ナルシシズムと男尊女卑志向を発症した男性たちを指す。
要は、妻に自分の母親の役割を負わせて身の回りの世話はなんでも焼かせ、自分は外に若い愛人を持ち、「女ってヤツは…」と偉そうに宣っている今もよく見かける残念なおじさんたちを思い浮かべればいい。

最も面白かったのは、ピーター・パン症候群がどのように発生しどのように進行していくか、その生態をつぶさに描いた2章。なるほどと思わされるところが多かった。

ただし、そのような男性にどのように対処するか(それが自分の息子なら、あるいは恋人や夫なら)を描いた3章は、やはり時代を感じさせ、少々古臭い点が見受けられる。
例えば、母親コンプレックスを持つ息子の母親に、「家事をさせるよう躾けろ」というアドバイスがあるが、…。家事のできない(する気もない)夫たちにうんざりした妻たちが、なぜ同じような息子を量産してしまうのかを考えると、そもそも子育てを母親だけに担わせていることそのものが問題なのではないだろうか。息子は、母親と協力して家庭を運営していく父親の姿をみることを通じて、そのような夫役割を自分のものとして引き受けることができるようになるのではないか。

著者ダン・カイリーの女性に向けたアドバイスは、「ウェンディになるな、ティンカー・ベルになれ」。それは尤もだけれど、私からすれば、最も有益なアドバイスは「ピーター・パンに関わるな」、これに尽きると思う。…そうすると、パートナーに相応しい男性はごく少数になってしまうのかな…



読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年9月10日
読了日 : 2021年9月10日
本棚登録日 : 2021年9月10日

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