初めて読んだ横溝正史作品・金田一耕助シリーズのファイル1。ただし、実際の作品発表順や作中時系列的には1作品目という訳ではなく、あくまで角川文庫レーベル内においてのナンバリングに過ぎない模様。
『八つ墓村』という耳にも目にも強烈なインパクトを与えるワードに、冒頭で語られる忌まわしき26年前の事件、時を経た因縁が首をもたげるかの様に次々と発生する奇妙で不敵な事件、更に物語をタフにする尼子氏落人黄金伝説という冒険要素まで盛り込まれた推理エンタメ作品。
あれよあれよと結構なペースで発生する殺人は、まさに’本命の殺人を隠すならばその他殺人の中に’という猟奇性と異常性を強く感じさせる。
手法に毒殺が多い事から犯人は女性だろうなとアタリをつけつつ割と自由に動き回れる人、となると犯人候補はあまりいないので「この人かな?」というのは自然と頭に浮かびつつ決定打は〈第七章 木霊の辻の恐怖〉まで進む必要があった。
動機と経緯は複雑なのでまともに読んでいる分にはまずわからないだろう。
ぶっちゃけ本作、金田一耕助はほとんど活躍らしい活躍を見せないのがフラストレーションであったが、p466以降〈その後の事ども(二)〉で耕助が長台詞で事件のあらましを語り明かすが、彼も「私は、この事件に対して、ほとんど匙をなげかけていた」(p472)と述べるあたり実に難事件だったのだと思う。
「われわれ凡愚の人間は、精神的には始終、人殺しをしているようなものなんです。」(p478)という耕助の言葉は得てして鋭い。
ゆっくりシリーズを追いかけていきたい。次は『本陣殺人事件』ね。
本筋とは関係ないけど、Amazonの主書影は現在の新装版に差し替えてはくれないのだろうか、角川さん…。
改版68刷
2023.8.7
- 感想投稿日 : 2023年8月7日
- 読了日 : 2023年8月6日
- 本棚登録日 : 2023年8月6日
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