(046)「本が売れない」というけれど (ポプラ新書 な 3-1)

著者 :
  • ポプラ社 (2014年11月4日発売)
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本棚登録 : 336
感想 : 47

書店・出版・取次業界にまつわる四方山話。
主旨としては『本を売』る最前線である書店側に軸足を置いたあれこれが中心。

本書の刊行は2014年、記載のグラフや話題は2013年の内容なので私が読んだ時点でも3、4年前、今となっては一昔前という事でやや経年を感じるかも。
『村上海賊の娘』ってもう10年前の作品なんですね。

言及は多岐に渡るので以下、個人的に気になった点を抜粋。


第2章「雑誌不況」は肌感覚でわかる。私が学生だった20年前でも電車やバス内で週間少年ジャンプを読む人が沢山おり、網棚に’どうぞ’という感じで置いてあるジャンプを拾って読むのが割と普通の感覚だった。’どうぞのジャンプ’である。それに週刊誌やギャンブル情報誌はたまた新聞ときどき堂々とエロ雑誌を読むおじさんが普通に日常の光景だった。

現在では、週刊誌とエロ雑誌を読む人はまず見なくなった。ジャンプも少ない。それに、総じて雑誌を読んでいるのはどう見積もっても30代半ば以上である。

確かにこれでは広告効果は乏しいだろう。


第4章「本の販売マージン」の話も、私が小学生時代に通っていた本屋さんの張り紙に’仕入れた本一冊分の利益を出すには10冊の本を売らねばなりません(だから万引きはしないでね)’というような事が書かれており、もちろん万引きはいかなる場合もダメなんだが、非常によく覚えている。あれから30年くらい経つが未だにほぼ同じ条件で卸流通されている事がまず根本の問題では。
そもそも人件費や光熱費、物流コストetc.あらゆる部分は値上がっているのになぜマージンは据え置きなのか。
一方で、時々テレビや何かに出演する一流ファッション誌の編集長とか一流グルメ誌の編集長とか、いかにも儲かっていそうな感じで現れるが、もちろん演出やネタなのかもしれないけど、ああいうのがもし真実なのだとしたら如何なものか。出版社の取り分が過剰でないのだとしたら、もはや全体的に価格を大胆に上げる以外に道は無いのではないだろうか。嫌だけど。

そして配本の問題。刊行点数は落ちないのに部数は下がり、輸送費は高騰して運び手もいない…と取次も疲弊している事はわかるが、にしても一部の店舗に偏り過ぎではないか。
当然、作りゃ売れる時代ではないのだから初版が下がるのは仕方ない。仕方ないのだが、都内の某店舗には山積みになっているのに全国的には品薄とか、どうなんだろう。


特別目新しい内容ではないけども、本が好きならば一読しておくと書店に足を運んだ時にまた違った感慨が湧き上がる一冊。



1刷
2022.2.28

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年2月28日
読了日 : 2017年8月30日
本棚登録日 : 2022年2月27日

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