(046)「本が売れない」というけれど (ポプラ新書)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 46
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591142233

作品紹介・あらすじ

ギモン① 本を読む人は本当に減っている?
ギモン② 売れていないなら、どうして出版関係者は忙しい?
出版不況といわれる現在、本はたしかに「売れなくなった」。商い不振で暇になるかと思いきや、本に携わる人たちは、ますます忙しい。日本の読書は、本は、どこへ向かうのか? 日本独自の流通システム、変わる書店の形、ネットの世界との関係性など、出版業界のこれまでを振り返り、読み手と本をつなぐ新たな出会いの形を模索する。

本は誰かに読まれて
初めてその存在の意味を持つ。
出版社も書店も取次も、
「本」を「読者」に手渡すためにある。
著者が10 年かけて書いた本が、書店の店頭から1週間で姿を消し、
多くの読者が知らないうちに断裁されパルプになってしまう状況は、
「本」と「読者」のためになっているだろうか。 ――本文より

感想・レビュー・書評

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  • 書店・出版・取次業界にまつわる四方山話。
    主旨としては『本を売』る最前線である書店側に軸足を置いたあれこれが中心。

    本書の刊行は2014年、記載のグラフや話題は2013年の内容なので私が読んだ時点でも3、4年前、今となっては一昔前という事でやや経年を感じるかも。
    『村上海賊の娘』ってもう10年前の作品なんですね。

    言及は多岐に渡るので以下、個人的に気になった点を抜粋。


    第2章「雑誌不況」は肌感覚でわかる。私が学生だった20年前でも電車やバス内で週間少年ジャンプを読む人が沢山おり、網棚に’どうぞ’という感じで置いてあるジャンプを拾って読むのが割と普通の感覚だった。’どうぞのジャンプ’である。それに週刊誌やギャンブル情報誌はたまた新聞ときどき堂々とエロ雑誌を読むおじさんが普通に日常の光景だった。

    現在では、週刊誌とエロ雑誌を読む人はまず見なくなった。ジャンプも少ない。それに、総じて雑誌を読んでいるのはどう見積もっても30代半ば以上である。

    確かにこれでは広告効果は乏しいだろう。


    第4章「本の販売マージン」の話も、私が小学生時代に通っていた本屋さんの張り紙に’仕入れた本一冊分の利益を出すには10冊の本を売らねばなりません(だから万引きはしないでね)’というような事が書かれており、もちろん万引きはいかなる場合もダメなんだが、非常によく覚えている。あれから30年くらい経つが未だにほぼ同じ条件で卸流通されている事がまず根本の問題では。
    そもそも人件費や光熱費、物流コストetc.あらゆる部分は値上がっているのになぜマージンは据え置きなのか。
    一方で、時々テレビや何かに出演する一流ファッション誌の編集長とか一流グルメ誌の編集長とか、いかにも儲かっていそうな感じで現れるが、もちろん演出やネタなのかもしれないけど、ああいうのがもし真実なのだとしたら如何なものか。出版社の取り分が過剰でないのだとしたら、もはや全体的に価格を大胆に上げる以外に道は無いのではないだろうか。嫌だけど。

    そして配本の問題。刊行点数は落ちないのに部数は下がり、輸送費は高騰して運び手もいない…と取次も疲弊している事はわかるが、にしても一部の店舗に偏り過ぎではないか。
    当然、作りゃ売れる時代ではないのだから初版が下がるのは仕方ない。仕方ないのだが、都内の某店舗には山積みになっているのに全国的には品薄とか、どうなんだろう。


    特別目新しい内容ではないけども、本が好きならば一読しておくと書店に足を運んだ時にまた違った感慨が湧き上がる一冊。



    1刷
    2022.2.28

  •  出版業の変化、書店の変化、消費者の変化から現代の出版不況を考えた新書。

     出版不況とよく言われますが、そのあおりをもろに
    くらっているのが雑誌だそうで、今の出版不況も雑誌の
    売上の大幅な落ち込みが大きいそうです。
    (そういえば最近でも週刊アスキーの休刊が話題になりました)

     僕自身、雑誌は図書館で読むことはありますが、買う
    という経験はほとんどありません。
    雑誌は文字通り色々な記事や情報を載せていて、そうした
    情報を得ることが難しかった時代には売れたのだと思
    いますが、現代ではインターネット等でそうした情報を
    早くしかも無料で見れる機会が多いので、雑誌の売り上げが
    減ることは仕方ないのかな、という気はします。

     では、読書離れ、活字離れについてはどう考えるか?

     著者が指摘するのは「新刊の本が売れていないので
    はないか」ということです。

     それと関連して著者が指摘するのは90年代から
    商売を始めたブックオフの急成長や図書館の貸し出し
    冊数の増加。
    本当に活字離れが起きているなら古書店のブックオフの
    急成長や貸し出し冊数の増加が説明できない、という
    論理です。

     この説明がものすごく自分の読書の仕方にあっていました。
    僕自身、本を買う時ブックオフで安く売られている可能性や
    図書館で借りてもいいんじゃないか、という選択肢を
    常に考えつつ、それでも「今読みたいか」
    「買って読みたいか」を軸に本を買うか決めています。
    そのため結果として本屋で買わず、ブックオフで買ったり
    図書館で借りたりということも多いです。
    (というか、家にある本のほとんどがブックオフですが)

     こういう選択肢で本を買うか選んでいる人は決して
    少なくないのではないかと思います。

     町の中小規模の本屋の現状についても触れられています。
     僕がよく行くのは駅前にあるショッピングモール内の
    大型書店です。そこは約一年前にできたのですが、休日は
    とてもにぎわっていてレジまで長蛇の列ができている
    こともあります。

    僕はそれまではいわゆる中小規模の本屋を利用
    していましたが品揃えがいいのと、駅前で他の用事
    も済ませられるということで、自然と利用頻度が移って
    いったという印象です。

     町の本屋が消えた理由として著者は町の本屋の利便性
    そして品揃えの悪さを挙げます。そりゃ同じ本屋に行く
    なら品揃えがよく、他の用事も済ませられるところに
    行く方が効率がいいですしね。

     また僕がよく行く本屋は、そこで本を買うとそこの
    ショッピングモールのポイントがつきます。
    こうなるとやはり町の本屋は勝てないよな、と正直
    思ってしまいます。

     電子書籍の章についてもう少し読みたかったかな、と
    少し思いましたが、全体的になるほど、と思えるところが多く、
    本好き、本屋好きなら読んでも損はないと思います。

  • 「本が売れない」という嘆きも、もはや枕詞のようになってしまっているけれど、これは「実際のところ、それは何故なのか?」を、シビアに考察したもの。町の本屋が消えていく一方で、個性的な本屋が脚光を浴びたり、図書館が注目されたり、本や書店をめぐる状況は揺れ動いている。その全体を俯瞰する視点に、説得力がある。

    古くからの書店が閉店する日、たくさんの人がやってきて名残を惜しむ。あなたたちが普段から利用していれば営業は続いていたはずだ、と著者はいう。なぜ行かなくなったのか?そこに欲しい本がないからだ。なぜないのか? 取次の配本の問題、コンビニなどの異業種の参入、不況による雑誌の衰退などなど、要因は複雑に絡まり合っていて、一筋縄ではいかない。このあたりの分析が整理されていて、非常にわかりやすかった。

    間違いなく言えるのは、「読書離れ」なんてウソだということ。著者の提示するデータはそれをはっきり示しているし、実感としてもそう思う。出版業界はそれを「犯人」にしたいだろうけど。「ごく一部のベストセラーしか売れない」というのもよく言われるが、それってつまり「面白いのを読みたい」人は多いということだよね。現状のように膨大な本が出版されていれば、何を読んでいいかわからない人は、世間の評判に頼るのも当然だ。

    よく思うのだが、本好きっていつも「どこかにもっともっと面白い、自分のために書かれたような本があるのでは」という切ない願いと、「それに出会うことはないのだろう」といううっすらとしたあきらめを、心のどこかに抱いているのではなかろうか。もし、そういう本に出会えるとしたら、それはやはりアマゾンの検索画面上ではなく、古い「本屋さん」の棚だろうと妄想するのだ。

  • 本を取り巻く環境の変化とそのビジネスモデルの苦境を鋭く分析した一冊。
     出版不況・中小型書店の倒産は様々な要因からなり、「本が売れないのは本を読む人が少なくなったからだ」という単純な構造ではない。そもそも分析によれば「一人当たりの読書の量はさほど昔と変化していない」。変化したのはその中身の割合。
     コンビニによる雑誌販売、ブックオフによる古本のカジュアル化と割引値段、Amazonの参入、電子書籍の登場、図書館の増加、超大型店舗の出現、雑誌の大きな購買層であった団塊世代の定年、長期不況での倹約志向の高まり、配本の仕組み、本の薄利多売の過熱、本の短寿命化などが挙げられている。その環境変化の荒波を直に受けてしまったのが新刊・雑誌を主な収入源としていた中小型の書店のようだ。 

  • 非常に客観的に本を取り巻く商流を分析していると思う。
    本を愛しすぎるが故によくある嘆き節ではなく、前向き且つ論理的な内容だった。

  • 本が売れない、読書離れだ、悪いのはテレビだゲームだネットだいや図書館だ!などと叫ばれつづけてひさしい。
    それは本当にそうなのか、イメージだけで悪者探しをするのではなくきちんと考えてみましょう、という本。
    おもしろかった。電子本きらいとかいっててもしょうがないじゃん、などの現実的な視点が良い。


    本屋は構造的にもうからない商売でありつづけているから、余裕のない多くの本屋は「売れる本」しか置かない(置けない)。
    でも売れるはずの本(「話題の新刊」と「ベストセラー」)しか置いていない本屋には、私の欲しい本がない。
    無責任な客の立場でいうと、「売れる本」しか売ってない本屋は出会いがないからつまんないんだ。
    店の個性がないなら愛着もわかないし、そんならどこで買ったって同じだ。
    わざわざ書店にいかないで目当ての本だけアマゾンでかうわ。

    これは『NO!ヘイト』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4907239106の「ヘイト本を売る本屋」と通じる。
    だから、「ものを仕入れて売るという商売の原点にもどれ」ってところが一番すっと納得できた。
    これを読むと、「売れないから悪いんだ」「いい本を出さない出版社が悪いんだ」などと不平をたれながしながらヘイト本をおく本屋が「貧すれば鈍する」を体現しているように見えてくる。

    でも、本屋なんていうもうからない商売をしてるのは本を大事にする人たちだから、なんとか続けて行こうとあがく姿には頭が下がる。
    コーヒーや雑貨を売って利益を確保するという話に、そういえばちかごろ本だけじゃない本屋をよくみかけるけれど、オシャレ本屋にはそんな理由があったのかと初めて気づいた。
    いっそ本を売るのをやめちゃえば利益が増えそうなものなのに、それでも本を売ってくれる。
    この人たちがちゃんと食っていけるしくみをつくるために、本を受け取るだけの側も状況を知らなきゃいけない。


    ・次々に新刊をだす自転車操業のような現状。
    でもこれは今に始まった話じゃない。石井桃子さんが50年くらい前に「最近は工業のように本を作っている。そうしないと本屋も作家も成り立たないけれどそれではいっさついっさつが大事にできなくなる」と書いていた。
    『家と庭と犬と猫』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4309021883

    ・『ミクロの森』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4806714593に、シカの頭数が増えて食害が問題になっているけれど、「増える前」というのはシカが乱獲されて減っていた時代のことで、それならむしろ今が正常ではないか、という話があった。
    「昔と比べて本が売れない」というのは、これとおんなじなのかも。
    戦前は識字率が低かったはずだし戦後は貧しかった。読める人・買える人の絶対数・も比率もすごく高かったバブル時代を基準に減ったと考えるのがそもそも間違っているんじゃないか。

    ・図書館のせいで本が売れない、という作家への反論として、本屋がない地域もあるんだよ!と書いてあった。で、『復興の書店』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4093798346を思い出した。
    「ほんの森いいたて」は、図書館も本屋もない飯館村の村営書店だった。
    公営本屋って選択もありなのかも。

  • 町の本屋がどんどん消えていく。若いころ町に出ての楽しみは、本屋と映画館だった。どちらも無くなった。本屋には2年ほど勤めていたこともある。本屋をしたいなとも思っていた。
    それは無理なんだという事は勤めてすぐ分かった。自分が売りたいと思う本が仕入れられないのだ。大きな書店だったので、無理押しをして、若気の至り、取次に出向いて思う本を仕入れ、店内に一つのコーナーを設けた。「ニュースを売る本屋」そうしたタイトルで、取材も受けた。
    そうした懐かしい「本屋時代」を思い出してながら、親身に読んだ。
    取次まかせの本の配本、売れなければ返品できる。存続の危機は、確かに昔からあった。
    身の回りで無くなったもの、ことも、少し考えた。

  • ●出版業界と書店の現状がわかる本。

    ●現状では、新刊本が1冊も入荷しない書店が2/3もあるという。

    ●書店が生き残るには、砂川市の「いわた書店」のように、書店側が「仕入れて売る」能力を向上させなければならない。

  •  ピーク時(1996年)からの17年間でじつに36%も売上が落ち、しかも下げ止まりがまったく見えない日本の出版界。
     寒風吹きすさぶその現状を、本の流通・販売にも造詣が深い(元書店員でもある)ベテラン・ライターが、改めてじっくりと考えてみた本。

     著者が挙げる「本が売れなくなった要因」は、ブックオフの台頭、ネットとスマホの普及、少子高齢化の進行など、誰もが思い当たることばかり。なので、「そうだったのか!」と膝を打つ驚きはほとんどない。

     ただし、だからつまらないかといえばそんなことはない。ブックオフの台頭、スマホの普及などがどのように本(新刊書)を売れなくしていったかが、改めて整理されて説明され、ことの本質がクリアに見えてくる面白さがあるのだ。

     とはいえ、私が知らなかったこともけっこう書かれていた。
     たとえば、最近の本の初版部数が少なめなのは、「本が売れないから」だけではなく、印刷製本技術の革新にもよる、という指摘。

    《皮肉なことに、大量かつ高速で印刷できる機械は、少部数の印刷が苦手だった。少部数つくろうとすると、どうしても1部あたりのコストが高くなった。ところが技術革新により、少部数でも安く印刷・製本できるようになった。だったら、いままで半年かけて3000部売っていた本は、最初に1500部だけつくって、あとは500部ずつ3回増刷すればいい。そう考える出版社が増えた。》

     なるほどなるほど。
     
     また、街の小さな本屋さんがどんどん淘汰され、書店がアマゾンとメガストアに収斂されつつある現状についても、わかりやすく解説されている。

     著者の文章は、「ライターの文章」のお手本のようだ。読みやすくて平明、無色透明で、けっして自分の個性を読者に押し付けてこない文章(ゆえにどんな色にも染まり得る)なのである。

     本書のもう1つの価値は、本が売れない主因は「読書離れ」ではないことを、データから改めて浮き彫りにしている点にある。
     日本人の読書量(必ずしも「本」ではない、文字を読む量だが)は昔に比べて落ちておらず、本や雑誌を「買って読む」量が激減しているだけなのだ。

     エピローグでは、“どうやって「本の文化」を守っていけばよいのか?”という、著者が考える処方箋が開陳される。ここも、同意するかどうかはともかく一読の価値がある。

  • 「本が売れない」というのは、昨今誰もが口にする。出版は斜陽産業だとか、娯楽の幅が広がって活字離れが進んでいるとか。そしてかつては駅前に必ずあった小さな本屋さんが廃業していることなど。
    でもこの本を読むと、ブックオフなどの古書店と、図書館の貸し出し冊数をあわせると、新刊点数を超していると書いてある。これは、正価で買ってまで読みたいと思える本が減っているということ。
    むむ。
    それからもうひとつ印象的なエピソードとして、著者が高知県の中学校に「読書について」という講演会に出かけたときのこと。その町の書店を見ておこうと思ったら、書店はなくなっていた。「では、中学生たちはどこで本を選ぶのか?」と聞くと、先生の答えは「図書館」だと。
    「図書館が栄えれば物書きは滅ぶ」と言う作家や出版社は、そういう地域に本屋を作ってくれよ。と結ぶ。
    図書館は本来そんな目的を担っている。

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著者プロフィール

1958年生まれ。ライター。書籍輸入販売会社のニューアート西武(アールヴィヴァン)を経て、フリーの編集者兼ライターに。90~93年、「宝島」「別冊宝島」編集部に在籍。その後はライター専業。「アサヒ芸能」「週刊朝日」「週刊エコノミスト」などで連載をもつ。ラジオ「ナルミッツ!!! 永江朗ニューブックワールド」(HBC)、「ラジオ深夜便 やっぱり本が好き」(NHK第一)に出演。
おもな著書に『インタビュー術!』(講談社現代新書)、『本を読むということ』(河出文庫)、『筑摩書房 それからの40年』(筑摩選書)、『「本が売れない」というけれど』(ポプラ新書)、『小さな出版社のつくり方』(猿江商会)など。

「2019年 『私は本屋が好きでした』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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