(046)「本が売れない」というけれど (ポプラ新書)

著者 :
  • ポプラ社
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レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591142233

作品紹介・あらすじ

ギモン① 本を読む人は本当に減っている?
ギモン② 売れていないなら、どうして出版関係者は忙しい?
出版不況といわれる現在、本はたしかに「売れなくなった」。商い不振で暇になるかと思いきや、本に携わる人たちは、ますます忙しい。日本の読書は、本は、どこへ向かうのか? 日本独自の流通システム、変わる書店の形、ネットの世界との関係性など、出版業界のこれまでを振り返り、読み手と本をつなぐ新たな出会いの形を模索する。

本は誰かに読まれて
初めてその存在の意味を持つ。
出版社も書店も取次も、
「本」を「読者」に手渡すためにある。
著者が10 年かけて書いた本が、書店の店頭から1週間で姿を消し、
多くの読者が知らないうちに断裁されパルプになってしまう状況は、
「本」と「読者」のためになっているだろうか。 ――本文より

感想・レビュー・書評

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  •  出版業の変化、書店の変化、消費者の変化から現代の出版不況を考えた新書。

     出版不況とよく言われますが、そのあおりをもろに
    くらっているのが雑誌だそうで、今の出版不況も雑誌の
    売上の大幅な落ち込みが大きいそうです。
    (そういえば最近でも週刊アスキーの休刊が話題になりました)

     僕自身、雑誌は図書館で読むことはありますが、買う
    という経験はほとんどありません。
    雑誌は文字通り色々な記事や情報を載せていて、そうした
    情報を得ることが難しかった時代には売れたのだと思
    いますが、現代ではインターネット等でそうした情報を
    早くしかも無料で見れる機会が多いので、雑誌の売り上げが
    減ることは仕方ないのかな、という気はします。

     では、読書離れ、活字離れについてはどう考えるか?

     著者が指摘するのは「新刊の本が売れていないので
    はないか」ということです。

     それと関連して著者が指摘するのは90年代から
    商売を始めたブックオフの急成長や図書館の貸し出し
    冊数の増加。
    本当に活字離れが起きているなら古書店のブックオフの
    急成長や貸し出し冊数の増加が説明できない、という
    論理です。

     この説明がものすごく自分の読書の仕方にあっていました。
    僕自身、本を買う時ブックオフで安く売られている可能性や
    図書館で借りてもいいんじゃないか、という選択肢を
    常に考えつつ、それでも「今読みたいか」
    「買って読みたいか」を軸に本を買うか決めています。
    そのため結果として本屋で買わず、ブックオフで買ったり
    図書館で借りたりということも多いです。
    (というか、家にある本のほとんどがブックオフですが)

     こういう選択肢で本を買うか選んでいる人は決して
    少なくないのではないかと思います。

     町の中小規模の本屋の現状についても触れられています。
     僕がよく行くのは駅前にあるショッピングモール内の
    大型書店です。そこは約一年前にできたのですが、休日は
    とてもにぎわっていてレジまで長蛇の列ができている
    こともあります。

    僕はそれまではいわゆる中小規模の本屋を利用
    していましたが品揃えがいいのと、駅前で他の用事
    も済ませられるということで、自然と利用頻度が移って
    いったという印象です。

     町の本屋が消えた理由として著者は町の本屋の利便性
    そして品揃えの悪さを挙げます。そりゃ同じ本屋に行く
    なら品揃えがよく、他の用事も済ませられるところに
    行く方が効率がいいですしね。

     また僕がよく行く本屋は、そこで本を買うとそこの
    ショッピングモールのポイントがつきます。
    こうなるとやはり町の本屋は勝てないよな、と正直
    思ってしまいます。

     電子書籍の章についてもう少し読みたかったかな、と
    少し思いましたが、全体的になるほど、と思えるところが多く、
    本好き、本屋好きなら読んでも損はないと思います。

  • 「本が売れない」という嘆きも、もはや枕詞のようになってしまっているけれど、これは「実際のところ、それは何故なのか?」を、シビアに考察したもの。町の本屋が消えていく一方で、個性的な本屋が脚光を浴びたり、図書館が注目されたり、本や書店をめぐる状況は揺れ動いている。その全体を俯瞰する視点に、説得力がある。

    古くからの書店が閉店する日、たくさんの人がやってきて名残を惜しむ。あなたたちが普段から利用していれば営業は続いていたはずだ、と著者はいう。なぜ行かなくなったのか?そこに欲しい本がないからだ。なぜないのか? 取次の配本の問題、コンビニなどの異業種の参入、不況による雑誌の衰退などなど、要因は複雑に絡まり合っていて、一筋縄ではいかない。このあたりの分析が整理されていて、非常にわかりやすかった。

    間違いなく言えるのは、「読書離れ」なんてウソだということ。著者の提示するデータはそれをはっきり示しているし、実感としてもそう思う。出版業界はそれを「犯人」にしたいだろうけど。「ごく一部のベストセラーしか売れない」というのもよく言われるが、それってつまり「面白いのを読みたい」人は多いということだよね。現状のように膨大な本が出版されていれば、何を読んでいいかわからない人は、世間の評判に頼るのも当然だ。

    よく思うのだが、本好きっていつも「どこかにもっともっと面白い、自分のために書かれたような本があるのでは」という切ない願いと、「それに出会うことはないのだろう」といううっすらとしたあきらめを、心のどこかに抱いているのではなかろうか。もし、そういう本に出会えるとしたら、それはやはりアマゾンの検索画面上ではなく、古い「本屋さん」の棚だろうと妄想するのだ。

  • 「本が売れない」というのは、昨今誰もが口にする。出版は斜陽産業だとか、娯楽の幅が広がって活字離れが進んでいるとか。そしてかつては駅前に必ずあった小さな本屋さんが廃業していることなど。
    でもこの本を読むと、ブックオフなどの古書店と、図書館の貸し出し冊数をあわせると、新刊点数を超していると書いてある。これは、正価で買ってまで読みたいと思える本が減っているということ。
    むむ。
    それからもうひとつ印象的なエピソードとして、著者が高知県の中学校に「読書について」という講演会に出かけたときのこと。その町の書店を見ておこうと思ったら、書店はなくなっていた。「では、中学生たちはどこで本を選ぶのか?」と聞くと、先生の答えは「図書館」だと。
    「図書館が栄えれば物書きは滅ぶ」と言う作家や出版社は、そういう地域に本屋を作ってくれよ。と結ぶ。
    図書館は本来そんな目的を担っている。

  • 本が売れない、読書離れだ、悪いのはテレビだゲームだネットだいや図書館だ!などと叫ばれつづけてひさしい。
    それは本当にそうなのか、イメージだけで悪者探しをするのではなくきちんと考えてみましょう、という本。
    おもしろかった。電子本きらいとかいっててもしょうがないじゃん、などの現実的な視点が良い。


    本屋は構造的にもうからない商売でありつづけているから、余裕のない多くの本屋は「売れる本」しか置かない(置けない)。
    でも売れるはずの本(「話題の新刊」と「ベストセラー」)しか置いていない本屋には、私の欲しい本がない。
    無責任な客の立場でいうと、「売れる本」しか売ってない本屋は出会いがないからつまんないんだ。
    店の個性がないなら愛着もわかないし、そんならどこで買ったって同じだ。
    わざわざ書店にいかないで目当ての本だけアマゾンでかうわ。

    これは『NO!ヘイト』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4907239106の「ヘイト本を売る本屋」と通じる。
    だから、「ものを仕入れて売るという商売の原点にもどれ」ってところが一番すっと納得できた。
    これを読むと、「売れないから悪いんだ」「いい本を出さない出版社が悪いんだ」などと不平をたれながしながらヘイト本をおく本屋が「貧すれば鈍する」を体現しているように見えてくる。

    でも、本屋なんていうもうからない商売をしてるのは本を大事にする人たちだから、なんとか続けて行こうとあがく姿には頭が下がる。
    コーヒーや雑貨を売って利益を確保するという話に、そういえばちかごろ本だけじゃない本屋をよくみかけるけれど、オシャレ本屋にはそんな理由があったのかと初めて気づいた。
    いっそ本を売るのをやめちゃえば利益が増えそうなものなのに、それでも本を売ってくれる。
    この人たちがちゃんと食っていけるしくみをつくるために、本を受け取るだけの側も状況を知らなきゃいけない。


    ・次々に新刊をだす自転車操業のような現状。
    でもこれは今に始まった話じゃない。石井桃子さんが50年くらい前に「最近は工業のように本を作っている。そうしないと本屋も作家も成り立たないけれどそれではいっさついっさつが大事にできなくなる」と書いていた。
    『家と庭と犬と猫』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4309021883

    ・『ミクロの森』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4806714593に、シカの頭数が増えて食害が問題になっているけれど、「増える前」というのはシカが乱獲されて減っていた時代のことで、それならむしろ今が正常ではないか、という話があった。
    「昔と比べて本が売れない」というのは、これとおんなじなのかも。
    戦前は識字率が低かったはずだし戦後は貧しかった。読める人・買える人の絶対数・も比率もすごく高かったバブル時代を基準に減ったと考えるのがそもそも間違っているんじゃないか。

    ・図書館のせいで本が売れない、という作家への反論として、本屋がない地域もあるんだよ!と書いてあった。で、『復興の書店』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4093798346を思い出した。
    「ほんの森いいたて」は、図書館も本屋もない飯館村の村営書店だった。
    公営本屋って選択もありなのかも。

  • 201708読了。

  • 出版、書店業界の凋落について、正確なデータと確かな見識で見事に分析されている。本好きには興味深い内容だ。

    著者は『中の人』だから感覚が違うのかも知れないが、本が売れないのは単純に値段が高いからだと思うよ。本なんて大抵の人にとっては単なる娯楽以上のものではないから、どうしても買わなきゃいけないもんじゃない。文庫やブックオフが売れているのも同じ文脈。本の価値として文庫や古本の価格が妥当と見られているのだ。
    だから本屋救済策としての新刊の値上げなんてトドメを刺すようなもんだ。ただ、ごく少数のホントの本好きを相手にしたニッチビジネスに転換する、と言うのも一つの戦略ではある。著者も出版社も書店員も大多数の人は仕事を失うけどね。

    この40年の書店を巡る環境変化を見てつくづく感じたのだが、書店業界も出版業界も何のイノベーションもないのね。自動車にしても家電にしても血の滲むような品質とコストの改善を継続してきて、ようやく今の姿がある。出版界は再販制度に守られた規制業界だから何とかやって来れたのだけど、本気でコストか品質(価値)の改善努力をしないと、みるみる衰退していくでしょ。同じ娯楽産業の映画に比べて明らかに努力不足。ある意味自業自得だと思う。

    とは言え、本好きには出版業界の衰退は他人事ではない。『中の人』の奮起を期待したい。

  • リベラルな感覚なので好印象を持ってしまった

  • 本や、本の流通、書店事情、アマゾンなどについて詳しく書かれ、楽しく読むことができた。

  • あー、言いたいこと書きたいことが全部書いてある本。

    どんな業態でも、時代とともに変わることで市場にフィットして生き延びてるのに、この業界だけジュラ紀のまんまで死にそうになってる。
    その要因になってる商慣習から課題感までをド素人でもわかる平易な言い回しで説明しつつ、解決改善に向けたアイデアまでが描かれた良書だと思います。

  • 本を読むためには、色々な入手方法が出来るようになった近年。リアル書店が、閉店しているのも事実ではある。AmazonなどのネットやBOOK・OFFなどの古本屋、図書館を利用する人だっている。私自身も、この全てをうまく利用して、本を入手している。だけど、一番は、やっぱりリアル書店で購入するのが、一番好きかな?と思うのである。リアル書店、ガンバレ!

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プロフィール

フリーライター。1958年北海道生まれ。書店勤務の後、編集者を経て、フリーのライターに。「哲学からアダルトまで」を標榜し、幅広い媒体で取材・執筆・講演活動をおこなう。近著に、『東大VS京大入試文芸頂上決戦』(原書房刊)、『日本の時代をつくった本』(WAVE出版)。弊社からは『そうだ、京都に住もう。』を2010年に刊行。

「2017年 『65歳からの京都歩き』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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