人気作家である五人の作家が19歳というテーマを元に短編を制作して一冊にまとめた本になっております。
トップを飾るのは電波女シリーズでも有名な入間人間さんの「19歳だった」です。
短編では難しいループ物で物語が構成されており、途中で二段落構成にしてみたり、ページのレイアウトを変えてみたりと、視覚的に面白くさせる努力がみられます。肝心の内容は単調で、四回目のループからは読むのが少し苦痛になってしまいました。二段落構成したところも、正直もうしまして大変読みにくく、ループを表現するには面白い手法でした。
二十歳を迎えるまえに童貞を捨てようともがく主人公が入間さんの作品の主人公らしく、ほほえましく思えました。
紫村仁さんの作品は、大学生がモチーフになっており、数人の一人称で物語を構成するスタイル。しかし、いっかんとしたテーマ性が曖昧で、読後に「それが?」と思ってしまいました。
綾崎 準さんもまた同じく、ユーモアな設定で綴られているものの、設定の一つ一つに説得力がなく、雲の上にそびえ立つモニュメントのようなおぼつかなさが作品から垣間見えてしまいます。
紅玉いづきさんの作品は、19歳という子供と成人の曖昧な境界線を彷徨う浪人生の心情をうまく描写しており、同じ19歳の私としてはもっとも感情移入してしまいました。ハルカを通じて人とのつながり。心の成長を表現して最後には切なさと暖かさをこの短い短編という形で表現出来るのは流石だと感じました。
最後の橋本紡さんの作品は、初めは会話文が連続する文体に抵抗があったものの、内容自体はとてもよく、19歳てまえのもろいプライドを上手く表現しており面白い作品だと感じました。しかし、会話文が続くシーンでは、このセリフは誰が話しているのだろうと混乱してしまう所もあり。少しだけ残念(まあ、私の読解力に問題があるのでしょうが)
- 感想投稿日 : 2012年5月17日
- 読了日 : 2012年5月17日
- 本棚登録日 : 2012年5月17日
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