鬼才ピエール・ルメートルの新作は、「恐れ」が主題。
本作は、静かに物語が進んでいく。
しかし、淡々としていながら、ずっとざわめいている、そんな進み方だ。
胸騒ぎ、あるいは、ジャパニーズホラーのような、見えないのに何かがいる、というような、静かな恐ろしさだ。
ホラーではないのだが、怪談が好きなら楽しめる筈だ。
さて、物語は12歳の中学生(日本の小6)、アントワーヌが可愛がっていた犬を隣家の男に殺されたことから始まる。
その怒りが、その男の息子に向かう。
「そんなつもりはなかったのに」。
人を殺めてしまったアントワーヌ。
この秘密を彼は抱えたままどうなるのか…
物語の結末は、さまざまなことを予感させる。
もしかして、と初めから読み返してみたくなる。
終始アントワーヌの視点で物語が進んでいたのだが、それに読者は踊らされていたと知る。
わかりにくい結末、見方によっては確かにそうかもしれない。
だがこの余韻こそ、読書の楽しみで、考察の余地があることこそやるせなさや人の心の複雑さを表してはいまいか。
著者の作品としては短めなので著者作品が初めての人にもおすすめ。
スプラッタが苦手な人にも◯。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外文学
- 感想投稿日 : 2022年7月3日
- 読了日 : 2022年7月2日
- 本棚登録日 : 2022年7月3日
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