火花

著者 :
  • 文藝春秋 (2015年3月11日発売)
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最近読了した『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』の中で、又吉さんの別の作品が紹介されていて、そういえばまだ『火花』読んでいなかったということに気づき、早速読んでみた。

普段、純文学にはあまり触れていないこともあり、最初は文体に慣れるのに少し時間がかかったものの、純文学の中では比較的読みやすい作品だったのかなと思う。
 
私は劇場に通ったり毎回の賞レースをリアルタイムで観るほどのお笑い好きではないけれど、お笑いはそこそこ好きで、芸人さんたちが語る裏話も結構好きだから、本作で芸人の裏側を垣間見ることができたのも良かったし、物語もラストまで純粋に楽しめた。
特に笑ったのが、徳永の姉のピアノのエピソード、蠅川柳、ベージュのコーデュロイパンツ。
スパースクの引退ライブもすごく良かった。

また、p114「神谷さんが相手にしているのは世間ではない。 いつか世間を振り向かせるかもしれない何かだ。その世界は孤独かもしれないけれど、その寂寥は自分を鼓舞もしてくれるだろう」、p120「自らの意思で夢を終わらせることを、本気で恐れていた。全員が他人のように感じる夜が何度もあった。月末に僅かなお金を持ち寄って酒を呑み、不安を和らげ、純粋な気持ちで一切の苦難を忘却の彼方に押しやるネタをそれぞれが考え練り実行した」
この部分は純粋に芸人さんたちに対するリスペクトの気持ちが湧いた。
仕事で嫌なことがある時、ふと寂しくなったり落ち込んだりする時、笑いで救われることは多々あって、その度に、芸人さんの笑いを追求する姿勢は本当にかっこいいなと思うし、芸人というお仕事は本当に素晴らしいと思って観てきたが、やはりその裏にこうした滲むような苦難があるんだということを、文章を通して改めて知ることができたのは良かったと思う。
又吉さんの他の作品も読んでみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 純文学
感想投稿日 : 2023年11月27日
読了日 : 2023年11月26日
本棚登録日 : 2023年11月25日

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