スイート・ホーム

著者 :
  • ポプラ社 (2018年3月9日発売)
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本棚登録 : 3683
感想 : 384
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宝塚のとある街で洋菓子店を営む家族と、近隣に住む人々の暮らしを切り取った、温かく愛の溢れる連作短編集。

・スイート・ホーム
小さな洋菓子店を営む両親の娘である陽皆(ひな)は妹の晴日(はるひ)と対照的に、優柔不断で恋愛経験が少ない。ある日職場の雑貨屋に客として訪れた昇さんに恋に落ち、やがて恋人となり、そして、家族になる。
父の丁寧な接客を自然と受け継いだ陽皆と、その心配りに惹かれた昇さん。お似合いすぎる二人。香田ファミリーと昇さんの人柄の良さが伝わってくる温かい作品。

・あしたのレシピ
料理研究家の母と二人暮らしの未来ちゃんは35歳独身で料理教室の講師。スイート・ホームで知り合った始に恋を寄せつつも、始の気持ちは陽皆へ向いていることを知ってしまう。それでも、決して自分の気持ちを押し付けることなく、始のために料理を教える未来ちゃんがとても素敵。始に対して「こんなに素敵な未来ちゃんを、あなたの鈍感さでこれ以上傷つけないで〜( ᵕ_ᵕ̩̩ )」と思わずにはいられなかった。

・希望のギフト
陽皆の妹の晴日の結婚、そして函館からやってきたいっこおばちゃんを含めた賑やかな生活が描かれる。
完全に核家族の家庭で育ち、15歳で実家を出た私には、社会人になって実家暮らしのうえに、叔母まで同居というのは、現実としてはなかなか考えられない状況だが、だからこそこんなふうにアットホームで優しさに溢れる実家というのはとても憧れる。

・めぐりゆく季節
ショートショートで『秋の桜』『ふたりの聖夜』『冬のひだまり』『幸福の木』『いちばんめの季節』の5つが収録されている。登場人物はスイート・ホームの常連さん達。関西人の集まりなだけあって、とにかく賑やかでポジティブ。
浪人して二度目の受験を迎える由芽。一浪というだけでもプレッシャーなのに、受験後にお疲れ様会まで開かれてしまっては、万が一不合格だった場合に見せる顔がないな…なんてネガティブな発想は、本作では考える必要はなかった(笑)

「幸せの塊」と言い切れるほど、毒味や穢れが一切ない作品を読んだのは久しぶり。(というか、もしかしたら初めてかもしれない)
読後に調べたら、阪急不動産が「阪急宝塚山手台」のPRとして原田さんに書き下ろしを依頼してできた作品とのことで、ユートピアな世界観にも深く納得。
幸せな気持ちにはなれるが、ストーリーが美しすぎて物足りなさを感じてしまい、個人的には星3.5くらい。

とにかく温かい気持ちになりたい、という方におすすめの作品。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(家族)
感想投稿日 : 2023年12月20日
読了日 : 2023年12月20日
本棚登録日 : 2023年12月18日

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