みえるとか みえないとか

  • アリス館 (2018年7月12日発売)
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本棚登録 : 2904
感想 : 242
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勝手に始めた「人気の絵本の特徴を見つけよう」の試み12冊目。
盲学校で教員をしていた母が、私が大学生の時にプレゼントしてくれた作品。

当時、"見える世界"で自分の容姿にコンプレックスを抱いたり、部活や受験といった競争社会で日々戦っていた私にとっては、"見えない世界"はある意味比較による苦しみがなく、むしろ福祉や公的年金等によって守られた世界、美しい世界という偏見があった。
受験を終え、大学生活を謳歌し、それこそ普通の小説を読むことに愉しみを覚えている時期に、頼んでもいないのに母からこのような絵本をプレゼントされたことに対しても、きれいな世界の押し付けだと過剰に反発し、読まずに棚に押し込んでいた。

社会人になって7年。母が仕事を辞めて、母娘の関係、生き方、いろいろなことに気持ちの整理をつけている中で、読んでみようという気持ちに。

内容は、小さい時に耳が痛いほど母から言われたことばの数々。みんな違ってみんないいの世界観。子どものときは従順すぎるくらいに素直に受け入れていたが、見える世界で疲弊するうちに、母の言葉が全て偽善に聞こえるようにもなっていた。
だが、今回改めてこの絵本を通して、見える世界、見えない世界、その他それぞれの個性や価値観をまるっと肯定することばに触れてみたら、嫌悪感を感じることもなく素直に受け止めることができた。

私の場合は母の仕事が関係していることもあり、母娘の関係(母に対して従順ないい娘でありたい自分と、母に対して反発する自分)が、福祉に対する価値観へ直結してしまっている部分があり、こういった世界に対してフラットな目線で自分の意見というものを持つことができずにいた。だからこそ、絵本を通して真っ白な心でこの世界観に触れることができたのはとても良い機会になった。
私の過去の偏見や反発は度外視して、作品自体は、ヨシタケシンスケさんの優しいイラストと伊藤亜紗さんの学術的研究を通して紡ぎ出されたことばが詰まった、素敵な絵本です。親子で読むのにも、学校での読み聞かせにも、おすすめの作品です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2023年12月22日
読了日 : 2023年12月19日
本棚登録日 : 2023年12月19日

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