浪人・磐音が江戸を舞台に活躍する時代小説、11作目にあたる。
幸吉に貧乏御家人呼ばわりされた気のいい品川柳次郎が宮戸川へやってくる、というほほえましいはじまりから、南町奉行所の笹塚が斬られたという不穏な展開へと物語は進む。
このシリーズを読んでいると、こんなにあちこちに町奉行が触れられないアンタッチャブルがあったのかと驚かされる。
時代劇では殿様のような威光を放つお奉行様も、不浄役人と武家社会の大身からは蔑まれる存在だったと、初めて知った。
これでは、増長したり羽目を外したりする人間が出てきても仕方ない。江戸社会の仕組みというのは、現代の眼で見るとどうにも歪なところがある。
描かれているのは徳川家治の時代なのだけれど、こんな将軍いたっけ?日本史で習った?というくらい自分の中では影が薄い将軍で、どうにもその治世は危うい感じがしてならない。
おこん、磐音、奈緒といった面々のままならない関係も描かれ、どう決着するのかなあ、と思う。
磐音が今までかかわってきた事件や人物たちがみなつながりあい糾われてこのシリーズは続いていくんだな、ということを感じる一冊だった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
エンターテイメント!
- 感想投稿日 : 2020年7月13日
- 読了日 : 2020年7月13日
- 本棚登録日 : 2020年7月13日
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