クッツェーによる聖書を思わせる寓話『イエスの幼子時代』につづく2作目。
『幼子時代』のときの衝撃はないものの、今回も「なぜだかわからないが面白い」という不思議な魅力でぐいぐい読ませる。
前回、無駄に制欲を持て余していたSimonがやや不快だったが、今回は相変わらずワガママで気が強いDavidや自分の人生を歩み始めるInesから家族として必要とされなくなり、悲哀とおかしみがすごい。
ヨセフって、自分と愛を交わしていない妻から生まれた自分の子供じゃない子供(しかもやたら偉そう)を実直に育て、にもかかわらずまるでスポットライトが当たらない不遇な聖人で、聖書のお話の中でもいつのまにか姿を消すし(高齢だったのでどこかで亡くなったのだろうけど、とはいえお話として触れられない…)、宗教画でも聖家族の脇で1人だけ居眠りして描かれていたり(まるでロバ番かのように…)、なんか可哀想だなと常に思っていたので、その姿と重なる。
予想外の殺人事件が起きたり、Davidが覚醒しそうでしなかったり、最後まで読んで早くも続きが読みたい!
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
翻訳小説
- 感想投稿日 : 2020年11月14日
- 読了日 : 2020年11月14日
- 本棚登録日 : 2020年11月14日
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