永遠の詩 (全8巻)2 茨木のり子 (永遠の詩 2)

著者 :
  • 小学館 (2009年11月25日発売)
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感想 : 73
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茨木のり子さんの詩集は、以前にも何冊か読んでいますが、この詩集の高橋順子さんの解説によると、意味を取り違えて読んでいたものがありました。この「永遠の詩」シリーズは解説が1作ごとにあり、とてもわかりやすく、選詩も、選りすぐりのものばかりで、評価されるべきシリーズだと思います。

「落ちこぼれ」
落ちこぼれ
  和菓子の名につけたいようなやさしさ
落ちこぼれ 
  いまは自嘲や出来そこない謂
落ちこぼれないための
  ばかばかしくも切ない修業
落ちこぼれにこそ
  魅力も風合いも薫るのに
落ちこぼれの実
  いっぱい包容できるのが豊かな大地
それならお前が落ちこぼれろ
  はい 女としてはとっくに落ちこぼれ
落ちこぼれずに旨げに成って
  むざむざ食われてなるものか
落ちこぼれ
  結果でなく
落ちこぼれ
  華々しい意志であれ

<解説より>
この国では、目立たないように身を処していないと、後ろ指を指されて生きにくいことになる。それゆえ、出足ががにぶい人、遠回りしている人には「落ちこぼれ」という美しくも、ありがたくないレッテルが貼られる。いまこの国の大地は、落ちこぼれの葉っぱを収容すべき弾力を失っているように、筆者には見える。この詩を書いたころの茨木は、みなさん、意志的に落ちこぼれようではりませんか、と檄をとばしていたのだが…。
さて、『作家のおやつ』(平凡社コロナブックス所収・2009年)によると、茨木が好きだった和菓子は名古屋の養老軒の白と黒の外郎。山形県鶴岡の栃餅だったそうだ。『寸志』所収。


「ぎらりと光るダイヤのような日」「わたしが一番きれいだったとき」「小さな娘が思ったこと」「一人は賑やか」「兄弟」「食卓に珈琲の匂い流れ」「恋唄」「(存在)」「歳月」もよかったです。


茨木のり子(いばらぎのりこ)
1926年(大正15)~2006年(平成18)。
敗戦後、結婚前後から詩を書き始め、川﨑洋とともに詩の同人誌「櫂」を創刊。
ヒューマニズムと批判精神溢れる詩で多くの読者の心を鼓舞した。
戦後を代表する女性詩人にして、エッセイスト、童話作家でもあった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 茨木のり子 詩集
感想投稿日 : 2019年9月2日
読了日 : 2019年9月2日
本棚登録日 : 2019年6月17日

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コメント 2件

ひだまりトマトさんのコメント
2023/02/18

まことさん、おはようございます。
茨木のり子さんの詩集は、とても読みやすく、スッキリと心に入り込んできて良いですね。
まことさんの感想でさらにその想いを深めました。
これからも、茨木のり子さんの詩集を読んでみたくなりました。

心にしみる詩情は、作者の言葉で感じ方が変わると思いますが、自分なりに楽しんでいきたいと思います。

これからよろしくお願いいたします。

まことさんのコメント
2023/02/18

ひだまりトマトさん。こんにちは♪

コメントありがとうございます。
今朝、ひだまりトマトさんの、茨木のり子さんの、レビューを拝読しました。
私も茨木さん、大好きな詩人です!
今、ちょうど、若松英輔さんの、100分で名著で、茨木さんの詩をテキストにして、ことばとは、何か、詩とは何かについてを、読んでいるところです。
まだ、途中ですが、とてもよいテキストだと思います。

ひだまりトマトさんも、いつも、レビューの言葉づかいが的確で、やさしいので、感心して、拝読させていただいています。

こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。

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