NHK短歌 新版 作歌のヒント

著者 :
  • NHK出版 (2015年2月18日発売)
4.79
  • (11)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 63
感想 : 9
5

この本は著者の永田和宏さんがおっしゃるには作歌のヒントであって作歌の指南書ではないそうです。

この本は最初、図書館で借りていたのですが、買って手元に置きたくなり購入しました。

作歌の上達は歌の<読み>から
これは耳の痛い言葉でした。
私は歌を読むのが不得手です。わかりやすい歌しかわかりません。もっとたくさん歌を読んで勉強したいと思いました。

もうひとつ大事なこと
歌では自分のいちばん言いたいことを敢えて言わない。
というのも私は言いたいことしか詠んでいないのでこれからはよく考えようと思いました。


以下、自分の為のメモです。

歌の素材
○もっと日常のなんでもない事物、なんでもない風景をおもしろがってみてはどうだろうか。
人が気がつかないようなさりげない物をおもしろがってみる。
○言っても言わなくてもいいようなことを言うのも詩の表現である→どこかでおかしさを誘う
○歌は人が気がつかないような「どうでもいい」ことに気づくかどうか。
○芸術写真ではなく、普通のカメラで撮ったような事物・光景・人が気づきもしないような、そんななんでもないモノにもっと注意深い目を注いでみたい。

発見の条件
佐佐木幸綱さんの「常識を捨てて発見せよ」は作歌の基本中の基本。
そしてつけ加えるなら発見は、目にした対象の発見ではないのです。そのように常識を離れてものを見ることのできる「自分の発見」「私の再発見」なのです。

小さな具体性の大切さ
○大きな光景や、感動的な場面を忠実に歌おうとするより、できるだけ小さな発見に固執することのほうが、初心者にはいい歌が作れることもあるようです。
○歌では、小さな具体が百行を費やしても表現しきれないだけの感情を、なにより雄弁に語ってくれる。

形容詞で説明しない
○選歌や歌会などの場にあっては「悲しい」とか「寂しい」とかの語があると、ほとんどの場合は採ってもらえない。
○言葉で説明すればわかるようなことは歌にする必要はないのです。

「写生」とは選択である
○写生という理念の根本は、何を詠わないかというその苦しい選択にかかっていると思う。
○言葉を選び単純化を心がけること。
どれだけ多く言うかではなく、どれだけ省略できるか、省けない重点は何かを見定めよ。
○枕詞は意識的にはなんらの寄与もしない。
代わりに、韻律を整え、さらに、歌が意味の呪縛から解き放たれるためにも機能している。枕詞は単純化を追求するひとつの手段。

嘘から出たまこと
○事実を少々嘘があっても、それが自分の表現したいところにぴったりであれば、必ずしも事実を最優先させる必要はない。むしろ嘘としての表現からはじめて見えてくる真実も時としてあり得る。

画面の隅に
○機会詠と言われるものは、作者が<直接に>遭遇した事件や社会事象を歌うところに意味がありました。
○第一はテレビや新聞を見たり読んだりするとき、いかにして事件をその枠組みから遠ざかって自分本来の日常的な視点を確保できるかという問題。
○第二は、画面の中心を見ずに、いったんは、画面の隅をみるということが大事。
○歴史的事件を当時の庶民大衆がどのように捉えていたかという点は、短歌以外ではなかなか残らない。

ユーモアのある歌・笑える歌
○詩歌と、笑い、ユーモアは元来相容れないものと考えられがちではなかったでしょうか。
がちがちになりがちな私たちの感性を「ほぐすもの」としての笑いやユーモアを大切にしたいものです。

形式を使いこなす
○結句の力ーオチをつけない。
○結句で理屈や辻褄をあわせようと思わずに、ふっと思いついたようなフレーズを思い切って持ってきても、詩形が作者のそのわがままを救ってくれる。
自分で理屈をつけたり、辻褄をあわせて歌を小さく窮屈にする必要はまったくなく、もっと自由に遊ばせてやってもいいのです。
○「結句でまとめようとせずに、ジャンプせよ」

倒置法と体言止め
○倒置法と体言止め、どちらも作者の意図を明確にわかってもらうには効果的な方法であり、うまくいけば印象がぐんと濃くなります。しかし、どんな方法にも、楯の二面性があるように、これらも下手に使うと歌の品位が低く感じられ、いじましいものになりかねません。 


以上第二章中程まで、以下省略。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 短歌
感想投稿日 : 2023年8月12日
読了日 : 2023年8月12日
本棚登録日 : 2023年7月5日

みんなの感想をみる

コメント 10件

アテナイエさんのコメント
2023/08/12

まことさん、こんにちは。

先日おききしたのですが、まことさんは短歌の勉強をされているのですね。私見ですが、この本はまさに買い本ですよね(笑)。広く短歌を楽しむ人のため、詠む人、読む人のため。よみのためのヒントが、端的に、わかりやすくアドバイスされていて、小気味よいです。

いつもながらまことさんのレビューが端的でわかりやすいので、わたしもあらためて勉強させてもらいました。わたしは昔の和歌も、近現代の短歌も、どうちらも好きなファンで~す。

まことさんのコメント
2023/08/12

アテナイエさん、こんにちは♪

この本は永田和宏さんが、NHK短歌に連載していたものを、まとめたものらしいです。
私は、アテナイエさんより、短歌歴は短いと思います。
アテナイエさんも、短歌の本をたくさん、読んでらっしゃいますよね!
以前に、いただいた、コメントに佐藤佐太郎さんという方が出てきたのですが、私はにわかファンに近いので、存じ上げなかったのですが、この本に、佐藤佐太郎さん、たくさん出てきました。有名な方なのですね!

アテナイエさんのコメント
2023/08/12

まことさん、びっくり、はやいレスありがとうございます!

和歌も短歌も好きですが、いやいや、まだほとんど読めていません。ぼちぼち焦らず……といっている間にどんどん時が過ぎてしまって(-_-;)
読みたい小説も積んだままだし、もうすこし真面目にできればいいのですが、でも苦行にならないように楽しくですね。

じつはわたしは半分山道のようなところをジョギングするのですが、健康のためというのもありますが、四季の移ろいや、自然の発見を得たいがためでもあります。これがその気になると飽きずにおもしろいのです。
なのでまことさんがチョイスされた以下の箇所は、とても重要だと感動します。まさに詩歌をつくる、あるいは読む、意義と広がりと醍醐味ですものね。

>発見の条件
佐佐木幸綱さんの「常識を捨てて発見せよ」は作歌の基本中の基本。
そしてつけ加えるなら発見は、目にした対象の発見ではないのです。そのように常識を離れてものを見ることのできる「自分の発見」「私の再発見」なのです。

そういえば、先日、あまりの炎暑に、ちょろちょろ水も枯れ気味の小川の床に、なんと白黒ぶち模様の猫がじっーと座っている! えーとえーと、は? あれ? あいや、そこは涼しいですか? と訊いたら短くニャーと言ってきました、瞑想の邪魔をしたかもしれんな、いやはや一気に涼しい気分になりましたよ。
猫は水が嫌いだという常識は違うのかもしれません(^O^)

たしかに永田さんも本のなかで佐藤佐太郎をたくさんひいてますね(その師匠は斎藤茂吉です)。とても素晴らしいので機会があればのぞいてみてください。わたしもいつものぞいている最中です(笑)

まことさんのコメント
2023/08/12

アテナイエさん、こんばんは♪

私は和歌と短歌の違いすらわかりません。
アテナイエさん、たくさん読んでらっしゃいますよ。
もしかして、歌も詠まれているのでは、ないですか。
この本も、読まれたのですか。

発見の条件は、大切なところだったのですね。「自分の発見」「私の再発見」が大事なんですね。
もしかして歌を詠む基本なのかもしれないですね。

斎藤茂吉は、私もいつか、まとめて読んでみたいです。
短歌の入門書には、時々出てくるので、少しだけ読んだことはありますが。
斎藤茂吉は、家から電車で、すぐのところに斎藤茂吉記念館があって、行ったことがあるのですが、その時の記憶が、すっかり抜け落ちています。わざわざ遠方からやってこられる方もいるのに、なんということでしょう。
斎藤茂吉の歌集を勉強してから、再訪してみたいです。

アテナイエさんのコメント
2023/08/12

まことさん、こんばんは♪

なんとまことさんの家の近くに斎藤茂吉記念館があるのですか、すごいです! まさに青い鳥(^^はすぐそこにありますね。
いつか訪ねてみたいな~。

この本は数年前に読みましたが、何度読んでも発見があるので、まことさんのレビューを拝見してあらためて勉強になりました。また本棚から引っ張り出してみたいと思います。ありがとうございます。
またあまり短歌は読めていませんし、詠みも真面目ではありませんが、ほそぼそ続けていきたいな~と思える奥の深い世界だと思います。

まことさんのコメント
2023/08/13

アテナイエさん、おはようございます♪

やはりこの本読まれていらしたのですね!
短歌も詠んでらっしゃるとのこと。教えてくださらないなんて淋しいですよ。
アテナイエさんの方がきっと大先輩ですね!
短歌は本当におっしゃるとおり奥の深い世界ですね。
私も、没にあきらめず、独りよがりでも、続けていきたいと思っています。

アテナイエさんのコメント
2023/08/13

まことさん、こんにちは♪

永田さんの本は端的でクールで好きなので、ほかの本もときどき拝読してます。永田さんの『現代秀歌』もおもしろいですよ。機会があればいかがでしょう。

あ、いやいや、すみません、言うほど詠んでおりません、ほんとに枯れがれ状態です。まだはじめて6年ほどですが、まわりの先輩は数十年されていて楽しそうです。合えば一生できる、詩の世界です。そして覗けばのぞくほど奥が深いことに気づいて、怖いもの見たさで細々やっています。

先生いわく、あなたははじめはとにかくひどかった(言外には、いまでもなかなかにひどい、という雰囲気あり)……え? そんなに? だって和歌じゃないのに藤原定家の真似してどうするの? いえそれは本歌取り(先達の歌の一部を拝借する)です、いやこれはもはや本歌取りじゃなくて剽窃、じゃこれはどうですか? 短歌は川柳じゃないし、じゃこれは? 歌は俳句のようにきったらマズイの、きる? めった切り?? あぁ大上段にかまえて意味不明になってる、あのねミステリーもいいけど思わせぶりは困るの、でも歌は結論はいわないのですよね、そういう意味ではないし、ねぇ31音しかないから題材を絞ってもっと身近なところをよく見てごらん、でもそんな些末なこと言って一体なんの意味があるのですか?……先生嘆息

我ながら目を覆いたくなるような痛さですが、このひどさが少しでも伝わればいいのですが、いずれにしても惨憺たる状態で、いまだに推移しているということです。それでも本人(私)はどこ吹く風で、あまり結果に一喜一憂せず、詠んだり、読んだりして続けてみることだと思ったりします。楽しんだもの勝ちです。

なので、まことさんがレビューされているところは、「すべて」耳がいたいです(笑)。写生ということ、見るということが、いかに難しいのかと思い知らされます。歌人佐藤佐太郎のいう「瞬間と断片」がまさにそうで、手法は違えども文学の醍醐味だろうと思います(この言葉を聞くたびに詩人ゲーテの「ときよ止まれ、おまえは美しい」というくだりを思い起こします)。

>○言っても言わなくてもいいようなことを言うのも詩の表現である→どこかでおかしさを誘う
>○歌は人が気がつかないような「どうでもいい」ことに気づくかどうか。
>○芸術写真ではなく、普通のカメラで撮ったような事物・光景・人が気づきもしないような、そんななんでもないモノにもっと注意深い目を注いでみたい。

すごいですね~またいろいろ教えてくださいね(^^

余談ついでに、おかしさを誘うお気に入りの歌を紹介します。

<大根を探しにゆけば大根は夜の電柱にたてかけてあり>(花山多佳子)

夕飯の買い物をして、自転車の後ろの荷台にでものせていたのでしょうか? 家に着いたら大根がない! <大・根・紛・失>、それだけでも十分に滑稽なのに、またこれを探しに行くという絵もおかしい。一方で、主を失った迷子の大根、すぐにわかるように誰かがわざわざ電柱に立てかけていたのでしょう、見つけた人の驚きと戸惑いと温かさ、そして暗闇に仄白く浮かぶ大根との邂逅、このどうでもいい滑稽さ! きっと美味しくいただいたはず……そんな余韻の広がる歌です。ひたむきな真面目さはときにおかしみを誘う、カフカ的世界。
とこれだけの下手なわたしのレビューをはるかに凌駕して、わずか31音に収めてしまうのが、歌の力ですね♪

まことさんのコメント
2023/08/13

アテナイエさん、こんにちは♪

わー、6年もされていらっしゃるのですね!
大先輩じゃないですか。
それに、アテナイエさんの、先生との会話、面白いです。
エッセイの才能も、あるかもしれないですね。

永田和宏さんの『現代秀歌』は、はて、聞いたことあるぞ、と思ってAmazonの履歴を見たら、2021年1月に購入済みになっていました(^^ゞ。
アテナイエさんが、レビューされた頃ですね。
今、行ってみてきました。
家のどこかにあるはずです。

○大根を探しにゆけば大根は夜の電柱にたてかけてあり
の歌は、私も何かの本で、読みました。(もしかして、この本かも)
面白いですよね~。
本当に奥が深いと思います。
私も、まだ、誰も探しあてていない、鉱脈を見つけてみたいと思いました。
色々、ためになるお話ありがとうございます。
また、機会があれば、短歌のお話をしましょうね!

アテナイエさんのコメント
2023/08/13

まことさん、こちらこそ楽しいお話をいただきありがとうございました。

永田和宏氏『現代秀歌』も購入され、私のレビューも読んでいただいたのかもしれず、なんとうれしいことでしょう。
今回まことさんは「 作歌のヒント」を読まれてメモも完璧なので、再度『現代秀歌』を眺められると、より永田さんの説明や、なぜこの歌が採られたのかわかると思います。

ぜひ楽しく読まれて(詠まれて)くださいね。こちらこそ、またのおしゃべりを楽しみにしています! まことさんの料理レビューも楽しみにしていま~す♪

まことさんのコメント
2023/08/13

アテナイエさん、こんばんは♪

『現代秀歌』みつかると、いいのですが(^^ゞ。
読める日が楽しみになりました。

料理レビューも、楽しみにしてくださり、ありがとうございます。
読んでくださる方がいるだけで、レビューのしがいがあります♪

ツイートする