闇の奥 (文春文庫 つ 8-8)

著者 :
  • 文藝春秋 (2013年2月8日発売)
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本棚登録 : 105
感想 : 17
4

円朝~でもうまいなあとうなったけど今作も思わぬところでゾクっとさせられる。
まず、入りは思いっきり怪談調。
熊野の奥に「小人の村」があるから行こうと意気込んで男三人が山へ入る。
そこで経験したことについては誰も語らない。

そして主人公が父親の家の遺品を整理しに行き、偶然見つけた手紙に誘われるように物語は進む。

戦中戦後父親が探していた三上隆という博物学者。彼は小人の存在を信じ、調査を続けていた。
主人公の父親がメンバーの一人だった三上隆捜索隊のジャングルでの冒険譚、首狩族、小人たち、ふっと話に現れては消える三上隆らしき人物の影。

通常、物語は最初「え、なにこのエピソードたちどうやってつながるの」って思って後半に行くにつれて視界が晴れる。でもこの物語は真逆。

和歌山カレー事件が絡み、捜索隊は第5次にまで至り、熊野の奥を探検したうちの一人の息子から父親が吹き込んでいたテープを受け取り、ここでまた主人公の私は言葉を精査して物語を作り上げる。

終盤、主人公らは第5次捜索隊として中国のマツタケツアーに紛れ込んで山の奥深く、外国人が通常立ち入りを禁止されている奥地にまで行って三上隆の実像を探り当てようと奮闘する。最後の一行であんなにシンプルに救われるなんてすごいです。

狙ってジャングル、ピグミー、宗教的なものを選んだわけじゃないのに「13」のあとにこういう物語を読めた偶然に感謝。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2014年3月15日
読了日 : 2014年3月15日
本棚登録日 : 2014年3月15日

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