単線の駅 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社 (2008年10月10日発売)
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感想 : 4
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・≪車内禁煙≫
昭和49年の作品。4,5年前に湘南電車の平塚・東京間が車内禁煙となったころのエピソード。日に50-60本吸う愛煙家の筆者が戸惑いながら、ルールを重んじ、守らない者に注意を促す。時代を感じる。
・筆者が農薬や化学品、人間の驕りに危機感を感じる気持ちが度々みられる。例えば、≪盛夏漫筆≫(昭和50年)『私は彼らを可愛がっているが、だからといって、それにたかる虫を一匹残らずやっつけようという気はない。植物と昆虫のつながりは微妙であってそれをバッサリ断ち切ろうとするのは人間の思い上りであろう。この世の全責任を負えるほど人間はエラくはない。』
・≪小説の脊骨≫筆者の若い頃は、文学修業と言えば純文学を勉強することであったそうだ。純文学畑の人たちが稼ぎのために通俗小説などを書くようになったことを嘆く。通俗小説なり、式場小説なり、五十過ぎの作家の書くもののほうが若い人のよりもまだマシだという。五十代の作家は、検閲、取り締まり対策に露骨な言葉を使わぬよう必然的に文章がうまくならざるを得ないのだそうだ。筆者は、小説とは元来、事態によって変わってゆくもの、放っておけばいいと諦めつつも、文学界の将来を憂う。
・メモ。木山捷平 『茶の木』、大岡昇平、松井栄造(野球選手、懇意にしていたが戦死した)、浅見淵
他に、暢気眼鏡映画化の際のエピソードも昭和十五年 島耕二監督 日活多摩川作品。原作とはまったく違っていて尾崎は腹を立てた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年3月31日
読了日 : 2016年10月7日
本棚登録日 : 2018年2月18日

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