再読。
従来の秩序が崩壊し、横行する食物の強奪や殺人はもはや犯罪ですらない国。物が次々失われていき、大半の人々が街を漁って一日を生き延びる国。そんな国に行方不明の兄を捜しに来たアンナ。
人の悪意に揉まれながら逞しく生きる術を身につけ、絶望の中でも支え支えられる人々との出会いから新しい希望を見出していく。誰かに必要とされる、それこそが最大の生きる理由なのかもしれない。
昔読んだ時は完全に架空の世界の話だと思えたが、新型ウイルスの影響でマスクや一部の品々が姿を消したこの状況、いつこの“最後の物たちの国”になってもおかしくないのだと痛感する。
「何だかんだ言ったって、たとえこんなひどい時代だって、人生ってのはいくらでも素晴らしくなれるんだ。それをわざわざ台なしにしちまうことしか考えない人間がいるなんてねえ、ほんとに情けないよ」のイザベルの言葉が胸に刺さった。
この小説は作者からのアンナからの、混沌した時代を迎える今の人たちへのメッセージ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
SFファンタジー
- 感想投稿日 : 2020年3月6日
- 読了日 : 2020年3月6日
- 本棚登録日 : 2020年3月6日
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