元東京都監察医務院長で医学博士である著者が、2万体という変死体の検死を通じて得た所見を綴った本
人は死ぬとどうなるのか。なんらかの外力が働くと痕跡が残るのか、その他いろいろ興味深く読むことができた
ただ、著者の創作小説も含まれていて、これも確かに経験に基づくものなのだろうが、実話と創作が明確に分かれていないように感じたのは残念
【参考図書】
・「直角の死角」(山田宗樹)
・「死体は生きている」(上野正彦)
・「死体は語る」(上野正彦)
【引用】
考えてみると、よくもまあ、これらの危険(幾千幾万という発病の危険や災害事故自殺他殺など)をかいくぐり六十年間も、元気に生きてこられたものだと自分自身感心してしまう。生きているのが不思議に思えてくる。だからこの幸運に感謝せずにはいられない。(P10)
顕微鏡の倍率をいくら上げても、霊や魂は見えてこない。いや、目を閉じなければ見えないものもあるのかも知れない。(P36)
老人の自殺は、身内から冷たく疎外されたための孤独が主因であるから、一人暮らしの老人よりも三世代同居の老人のほうが、自殺率は高い。(P61)
推定という言葉は、事実が明瞭でない場合に、推し量って決めることをいうのであるが、素人の推定と専門家の推定には、本質的に大きな差があるのである。(P189)
(推定の)結果は素人の判断と同じであるが、そこに至るまでの過程は、専門家としての知識が十分働いているのである。(P196)
自分の仕事でも、このように言えるか。それだけの自信はあるか。死とは、生まれる前の状態と同じで、ナッシングなのだろうか。しかし、心が通じあっている場合にはたとえ肉体が滅びても心の中で、その人は生き続けている。死とは一時的な別れにすぎないのだろうか。(P206)
だから私は、死ぬときには寂しくも悲しくもない。それらの人びと(自分が検死した死者)との再会を楽しみにあの世とやらに旅立って行きたいと思っている。(P208)
- 感想投稿日 : 2020年9月12日
- 読了日 : 2014年5月25日
- 本棚登録日 : 2013年7月3日
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