大学はもう死んでいる? トップユニバーシティーからの問題提起 (集英社新書)

  • 集英社 (2020年1月17日発売)
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感想 : 23
4

吉見さんの本をもう一冊読んでみたいと思ったら、なんと苅谷剛彦さんとの対談が出たところ。
二人から醸し出される意識高い系感(まあ、そもそも副題がトップユニバーシティーからの問題提起だもんね)に、若干たじろぐ。

今の大学改革というよか、次の高校改革に向けて、持っておきたい視点が幾つかあった。

例えば、深い学びについて。
学びを深めるためには、教員一人あたりに受け持つ生徒が多過ぎてはいけないということ。
でも、生徒一人の取り組む授業数が多過ぎてもいけないということが書いてある。

それは知識網羅主義とも関わってくるわけで、より多くの知識を受け取ろうとすれば、そうなる。
高校でも、もうすぐカリキュラムが変わるけど、沢山の科目を設定するのか、一つの科目に単位を多く設定するのかって大きい部分なのかも。
もちろん単位を多く配置することは、教員の技量も問われるし、落とすことのリスクも生まれる。
ただ、週二回の授業でやれることに限りはあって、深い学びを方針として打ち出すなら、その部分をスルーしてはいけないように思う。

二つ目は、教科横断の可能性について。
これも政府のパンフレットなんかで目にはするけど、具体的にどんな取り組みを言いたいのかはよく分からずにいる。
この本では、文理融合から文理複眼へという章があって、以前読んだ吉見さんの本に書かれていた文系知と理系知の違いが書かれている。

いやいや、文系とか理系とか、ないから!
という意見も、勿論あるし、人に落とし込むからそうなるのかなと思っていた。

けれど、それぞれの研究手法、アプローチの違いをちゃんと把握することで、教科横断の可能性が広がるように思う。
そのためには扱う側も、横断的な考えがないといけないとは思うけど……。

そして三つ目。
ただ単に留学することの危険性について。
これはグローバル人材の章にあたる。
一週間やそこら、わらわらと学生連れて行って修学旅行の延長線上みたいなことしたって、自分の中の価値観の揺らぎなんてあるわけないでしょ!
ってか、日本という国のこともよく知らずに海外に浸り過ぎても、根無し草になりますよ!
というご意見。

周り見ても、この留学制度って思ったよりお金かかっていて、そして自分の時にはアイツもコイツも留学してます、なんて状況はなかった。

だから、確かに何かは動いているんだけど。
果たして何のために動いているのかが分からない。

語学研修と自分探しがごっちゃになったような。
結局、日本に比べて◯◯国は違う!え、何が?自由だった!自由って何?みたいな中身ない感に終わってしまう人もいるように思う。

勝手に目的意識持って勝手に行くやつは良いのだ。
でも、システムとして、行事として、それを若い子に与えるのなら、与える側の考えをもっと盛り込んでいく時期が来たと言える。
いや、それはお国のために視察してきなさいってことじゃないからね……あしからず。

最後に、大学のレファレンスが便利になりすぎて、自動で本が出てくるのは悪だという話に笑う。
辞書と同じだなと思った。
偶然の出会いによって自分の知は思いがけず進む。
こういうのも、セレンディピティっていうんですかね。便利って、怖いわ。

そして一言。
なんぼほど長いレビューやねん!(星4で!)
お粗末様でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2020年
感想投稿日 : 2020年1月28日
読了日 : 2020年1月28日
本棚登録日 : 2020年1月28日

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