二週間に一話はハイペースだけど、この一冊におよそ一年の時間がそのまま流れているわけで、そう考えると面白い。
あとがきにあるように、ファンの方が持ち歩きたい作品と言うのは分かる気がした。
(『銃』やら『遮光』やら、中村文則のカバンに潜めるシリーズは不穏だけど、笑)
「タクシードライバー」という、冒頭の話が、とても良かった。
同じ時間に、同じことをしなければならない、そんな制約がどんどん強まっていく男。
同じ時間に、同じバーに来て、同じタイミングで飲み始め、飲み終える。
それさえ怖くなって店長には時報を流しておいてもらう。
自分は繰り返しだけをひたすら願うのに、周囲の無遠慮な変化はそれを赦してくれない。
同じ時間、同じバーにあるはずの席が、その日混雑していて、なくなっていた。
人であろうとするから、制約が付いてくる。
だけど、人であったから、救われることもある。
途中から自分の中の強迫観念のようなものに触れていることに気付きながら、結末に、私が救われた。
「宗教や神話にあるヘブンとは、本当は、あの世のことではないのだから。ひとが世紀を跨ぎながら創り上げていく、その先に実在する世界のことだから」
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
2018年
- 感想投稿日 : 2018年1月21日
- 読了日 : 2018年1月21日
- 本棚登録日 : 2018年1月21日
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