正しい女たち (文春文庫 ち 8-4)

著者 :
  • 文藝春秋 (2021年5月7日発売)
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感想 : 95
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浸ったー。印象的な作品をピックアップ。

「温室の友情」
なんでも話し合える女同士の友情、なんて存在するだろうか?(「桃のプライド」である種のアンサーが見える気がしているけど)

一方で女同士だから出来る暗い仕打ちは、なんとなく分かる気がする。「嘘」は分からなければ「嘘」足りえない。そういうの、好きだけどな。

「海辺の先生」
お気に入り。
スナックを営む実家に嫌気がさして、東京の大学を目指す美優。一度はお客さんとしてやって来た「先生」との、夜の勉強会。

もっとドロドロとするのかと思いきや、母と娘の対峙は爽快で、良かった。
そういえば「温室の友情」でも「分かってないのに分かった気でいる」母の呪いが描かれていたなぁ。

女に変わる母も怖い。
娘と化す母も怖い。

「幸福な離婚」
これも好きー。
息がピッタリと思うのに、お互いがそこにいるように思うのに、すれ違いきった二人は、目の前に別れの日付を置いている。

あと四ヶ月半。

二人はどうなるだろう。どうもならないだろうか。
漫画を読んでいるように、切なくなる。
いなくなると分かって、切実に大切に感じることは偽物の気持ちなんだろうか。

「描かれた若さ」
これが最後に収録されているのが。すごい。

オジサンが女子高生に罵られながら、見られ、描かれ、知り尽くされる。なんだこの、世界。でも、描かれることの真実さ、怖さが、よく伝わってくる。
ふと『騎士団長殺し』が蘇った。やっぱ怖い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2021年
感想投稿日 : 2021年5月8日
読了日 : 2021年5月8日
本棚登録日 : 2021年5月8日

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