CF

著者 :
  • 徳間書店 (2022年6月29日発売)
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本棚登録 : 222
感想 : 19
3

テーマの面白い作品だった。

「責任」が物質化出来て、なおかつそれを物理的に取り除くことの出来る秘密の施設がある。
世の中の数多ある責任問題は、この施設で攪拌され、責任を負うべき人の責任を感じずに済む。
そして、責任を問おうとする被害者の気持ちもまた、霧散してしまう。

そもそも「責任」を感じるとは?と思った時に思い出したのが、古田徹也『それは私がしたことなのか?行為の哲学入門』だった。

行為は、様々な因果によって成り立つ。
意図的な殺人にしても、加害者の背景を探ろうと試みることは、その人だけに責任があるわけではないという思いもあるだろう。
そしてまた、その背景となる人や団体、社会は、時として〝寝耳に水〟のような出来事に、頭を下げなくてはならなくなることもある。

では、責任を感じる心がなくなったら?

CFの世界は歪で、物理的な処理を行うために、その毒物に身体を蝕まれる工員の姿が描かれる。
(しかし、彼らはそれが本当に「責任」を扱った仕事なのかも、それによって身体がなぜ蝕まれるのかも知らない)

結局、それって罰によって罪が償われることと違わないのでは?
……と思うのだが、実際に「責任」がなくなってしまうという、気持ちの安寧のためには、償いに自らを投じてしまう(ものなのかもしれない)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2023年
感想投稿日 : 2023年1月21日
読了日 : 2023年1月21日
本棚登録日 : 2023年1月21日

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