気持ち悪さと美しさが渾然一体となる不思議。
以下ネタバレ含む。注意。
「先回りローバ」
留守中に電話に出ることの怖さから、時報の声に聴き入る吃音の少年。
この取り合わせの妙。小川洋子凄すぎる。
そうか。時報って声なんだな、と思い出す。
関係ないけど、昔、NHKで12時を知らせる黒盤の時計を食いいるように眺めていた。
規則正しく刻まれる声への憧れ。
知り合いの吃音症の方に、自分の発声に対するコンプレックスを聞いたことがある。
でも、内容よりも訥々と語るその姿に、美しさを感じたことを覚えている。
「かわいそうなこと」
身の回りにあるかわいそうなことを、ノートに収集して慰撫していく話。
シロナガスクジラの骨、図鑑のツチブタ、不器用な野球少年。
そうした存在に、当事者以上の痛みを感じ、その痛みを丁寧に癒しに変えていく「僕」。
一見、「かわいそう」と勝手に判断して、自分たちの世界に連れ込んでは、実のところ自分たち自身を慰めているに過ぎない、そんな今の社会の光景を彷彿とさせる。
でも、この「かわいそう」な存在は、自分の身代わりに出来てしまったものなのかもしれない、と辺りを見渡す「僕」を否定する気にはなれない。
はっ!キリがないのて、一言ずつ(笑)
「亡き王女のための刺繍」
ツルボラン、整然とした姿が怖い。
「一つの歌を分け合う」
レ・ミゼラブル、脳内再生間違いなし。
「乳歯」
海外で迷子は、確かに死を覚悟する。
「仮名の作家」
ファンに気を持たせてはならない教訓(笑)
「盲腸線の秘密」
曾祖父を苛めないで……。
「口笛の上手な白雪姫」
短編に詰めきれない濃い作品を最後に持って来る所に、笑みが零れる。
- 感想投稿日 : 2018年2月7日
- 読了日 : 2018年2月7日
- 本棚登録日 : 2018年2月7日
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