剣術とは無関係な素人レビュー。
オビには「近世剣術「新陰流」の優れた術理を明快かつ詳細に説き、身体論、日本人論として秀逸な一書。」とある。
恐らく、そういう方面に聡い方であれば、第三章にある十の太刀筋についての記述は、非常に分かりやすいと感じるはず。
しかし、この本をただの剣術書としていない所は、その「日本人」論的な部分である。
日本人が鉄器を持ち始めたのは、殺戮の為ではない。
稲作文化の栄えたこの国において、鉄器は農耕と離せない豊穣の神具であった。
いつか読んだ文にも、例えば多く古典が残されている平安時代においてさえ、殺戮のシーンというのは描かれない。
それは芸術性を高め、日本刀と成る。
勿論、その後、剣は道となり、筆者が言うには法(のり)となるわけだが。
内田樹は合気道について「どのように身体を使えば、どのように動くか、ということを型を以て知ることは、自分自身の内面を、知らなかった部分を知ることに通じる」というような事を話していて、それは本書にも通じるように思う。
相手をどう動かし、どのタイミングで剣と身を一つとするのか。
人が剣と一体となる、とはどのようなことか。
結局、必勝に至るには、自身についてよくよく知らなくてはならない、そんな哲学が含まれているのだと感じた。
およそ自分から手に取ることのない分野の本を読んだことは、貴重だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
2017年
- 感想投稿日 : 2017年1月8日
- 読了日 : 2017年1月8日
- 本棚登録日 : 2017年1月8日
みんなの感想をみる