初期の大槻ケンヂ作品は個人的に全部好き
オーケンの初長編
今読むと少し違和感のある部分がないでもないが、オーケンワールド全開で最後までテンポ良く読める。これ以降の作品にも登場する人物も出てくるし、その中でも「ゾン」の魅力がハンパない。
幾度となく再読しているけど、未だに「こうであったら」「もし、これが……」とIFの世界を考えたくもなるし、その後の主人公ジローがどう生きたか考えてしまう。
以下極力ネタバレ回避しつつ
ネタバレも多いので読後推奨
第一章:誘流メグマ祈呪術
主人公とヒロインの立ち位置、キャラクターがわかりやすく、導入がスムーズ。説明じみた長台詞もオーケンワールドらしく、すんなりと飲み込める。淡々と進みストンと落とす感触が漫画的な表現にも感じて、実に心地いい
第二章:自分BOX
宗教団体の人間の立ち位置や教義はもちろんの事こと、いわゆるある程度の集団になると発生する真面目、不真面目、カーストの「あるある」「わかるわかる」の連続。更に前章の「誘流メグマ祈呪術」がどんなものであるかの詳細と、中間さんの語るゾン、そして中間さんの後悔がずっしりと重い。中間さんがゾンに対して持っていた感情が嫉妬であり、恋慕であり、畏怖であり、尊敬である事が隠されずに書いてあるのが愛しい。
第三章:神猟塚聖陽心霊治療塾
前章が中間のゾンという同性への心情を書いたものに対し、こちらは聖陽(陽子)のしづという同性への心情を書いている。どちらも性愛としての同性愛を語るわけではないが「大切な同性」に対しての絶対的な感情を描いていて面白い。
しづの心は実際どこにあったのか判らないが、陽子の見た月が事実であるなら、気持ちはけして一方通行ではなかったのだと信じたい。
第四章:僕の爆弾
まだ全てを掴み切れていない主人公。前章で「誘流メグマ祈呪術」を間近で見たが、その力が自分にも使えると言われてもピンときていない。そこにA教という巨大な宗教団体の騒動がニュースになる。
中間にとって過去の苦い思い出と、修羅場にいたい野次馬根性で騒動の現場へ駆けつける。そこで……この展開は予想できなかったので、最初に読んだ時は本当に胸熱展開だった。とにかく、ガラムが吸いたくなる。
そこからは怒涛の展開で、主人公ジロー覚醒までが一気に進む。
※BL好きな人は、この章だけでも読む価値があるので読むと良いと思う笑
第五章:中間
前章の能力戦の件で連日参考人として聴取される中間。失踪するヒロイン。中間のゾンに対する本当の感情、それがなんであるかのバランスが絶妙。
中間という男の願望と欲望の言語化はあまりにも判りやすく、自分の琴線に触れる。
第六章:トー・コンエとなつみさん
前章最後に突如現れたヒロイン。ヒロインは教祖てあるトー様のために主人公に助けを求めに来る。そこからの話はオーケンワールドなので、テンポ良く台詞のみでストーリーはさくさくと進む。
今まで登場しなかった教祖の正体が明かされるが、実に身も蓋もない。
そして……ストンと終わるのがオーケン小説の良いところだと思う。
中間からの電話が救い。しかし、それで良い。そうであるから、オーケンワールド。
あとがき
初期のエッセイと同じ軽快なテンポのあとがき。一九九二年……当然ながら、あまりピンとこない笑
解説/永井豪
解説が漫画! このスタイルをとったという事が既に面白い。
- 感想投稿日 : 2022年3月17日
- 読了日 : 2022年3月17日
- 本棚登録日 : 2022年3月17日
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