百の夜は跳ねて

著者 :
  • 新潮社 (2019年6月27日発売)
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本棚登録 : 857
感想 : 94
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私たちは多くの生に囲まれて生きているが、その生を深く意識することはない。周りの皆は「当たり前のように」生きている。それを「生きているもの」として真面目に意識するとどこか不安な(不快な)気持ちになる。ビルを模した箱にビルで生きる人の写真を貼り付けて眺めることもまさに生を真面目に見るような行為で、老婆はある意味一種の自傷行為をしているように感じられた。鏡が怖いのも、鏡をまじまじと見ると似たような感情になるんだろうなーと一人で勝手に考えてしまった。

このようなファンタジーっぽい展開の物語は苦手だったが、ビルの清掃という死と隣り合わせの環境、北にある島の話、箱に貼られた写真がどれも「生きること」とは何かを伝えようとしている感じがして一気に読み進めてしまった。

「平成くん〜」もそうだったが、現代文化が随所に含まれている。10年後、20年後また読み返すと懐かしい気分に浸れるだろう。「平成くん〜」と本書ですっかり古市さんのファンになってしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年10月28日
読了日 : 2020年10月28日
本棚登録日 : 2020年10月17日

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