花のれん (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1961年8月17日発売)
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再読。
「ぼんち」「女系家族」などと並んでいわゆる「船場もの」と言われる、商都大阪の中でも、古くからのしきたりや伝統が重んじられるセレブエリア「船場」を舞台にしたシリーズ。
からきしダメな旦那に、古着商売を畳ませて、「寄席」商売をはじめさせた多加。がむしゃらに旦那の商売を支える矢先、妾宅で突然旦那が他界。まさに女手一つで小屋を増やし、芸人を増やし、やがては通天閣まで所有するに至るサクセスストーリー。後の吉本興業につながるまさに大阪文化草創の物語。銭銭銭、の商人魂の根底に流れる熱い義理人情に、ほろり、ですよ。
物語で語られる大阪弁を読んでいると、こんなにゆったりして、優しさにあふれ、美しい言葉だったのか、と感心してしまいます。きつく聞こえてしまう表現も、少々ねばっこくてもオブラートに包んでしまう、この優しさに溢れた微妙なニュアンスをいつの間になくしてしまったのか、考えさせられます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 山崎豊子
感想投稿日 : 2013年5月28日
読了日 : 2013年5月28日
本棚登録日 : 2010年9月30日

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