犯人のいない殺人の夜 新装版 (光文社文庫 ひ 6-15)

著者 :
  • 光文社 (2020年2月5日発売)
3.40
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本棚登録 : 2070
感想 : 105

小さな故意の物語 
まさに小さな故意の物語で少女の少しの恋心が
微妙に揺れて動いてしまったことから起きた事件。
シャレの効いたタイトルでこうゆうユニークなのも良いです。

闇の中の二人
まさか子供だと思っていた息子が
小さな息子の本当の存在を知って過ちを犯してしまった事件。
犯人も悪いけれど事件のきっかけとも言える義理の母も
誘発性があって悪い気がします。

踊り子
勉強に明け暮れていた少年が初めて人を好きになるという
ことから転じてしまった事件。
淡い恋心だったのに幻想になってしまって、
この短編集の中では何も自分の手を下していないのに
可哀想な事件でした。
この少年が事実を知ってしまったらどうなるのだろうかと
思ってしまいました。

エンドレス・ナイト
意外な所から事件のきっかけが生まれる。
人のおいたちというのも意外と
無視できないものだと思ってしまいました。
いくら自分の育った環境で親が
「大阪で商売を始めると何かにとりつかれたように
人が変わるのだそう」と言われて嫌いになったとしても
その後の環境で考えを変えるということが出来なかった
のかと残念な思いが駆られた事件でした。

白い凶器
死んだ夫の形見のお腹の赤ちゃんを流産してしまったことで、
自分を邪魔するものはどんな手段でも選ばないという事件。
ラストはちょっと何かに取り憑かれているようで不気味な余韻でした。


さよならコーチ
このトリックを読んでいる途中で物理学者湯川シリーズの
ガリレオのドラマの中にあった同じようなものを思い出しました。
もしかしたら同じものだったかと・・・
けれど今までスポーツ一筋で頑張ってきた選手が
その選手生命が突然断たれてしまった時には
一人の女性としての生き方を考えてしまって
これもある意味可哀想な結末でした。
ただこのコーチの傲慢さには怒りが出ますが。

犯人のいない殺人の夜
この短編集の中で一番どんでん返し感の強い作品でした。
結末を読んだら思わず最初から振り返って
読み返してしまい、文章のトリックにもやられたました。
この作品あたりが最近の長編へと続いていっているような
気がして東野さんの原点がここに出ていると思われる作品でした。


初版本は1994年というひと昔前の話ですが、
時代背景が今とは多少違っているものの、
それはその時代を通ってきたものとしては
それで面白さや懐かしさだと思って読めました。
最近の長編小説とはトリックの規模などが違うものの、
短編でもきっちりとしたトリックでまとまって
読みやすく楽しめました。

トリックの手法も様々な方法だったので、
東野さんでもこんなトリックを使っていたのだと
関心して読んでいました。

あまり東野さんの短編集は読んだことがなく、
初期のものも殆ど読んでいなかったので
またこれで今とは違った面白さがあって新鮮でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年6月30日
読了日 : 2020年6月30日
本棚登録日 : 2020年5月11日

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