白い巨塔〈第5巻〉 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2002年11月20日発売)
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感想 : 208
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大学病院を舞台にして繰り広げられた権力闘争、医療過誤の法廷闘争の幕が降ろされる最終巻。あとがきによると本当は三巻までで終わっていたはずが、読者からの反響の大きさにより続編として書かれたのが四、五巻に当たるという。前半だけで終わっていたら、これほど静かな読後感があったかどうか。
法廷闘争第二審の最中、あまりの財前の横暴ぶりにそれまで偽証を繰り返していた証人が自分の言を撤回する。しかし物証がないため信頼性に欠けるとされた時、「シヨウコアル」との電報が届くシーンは心揺れた。
悪逆を尽くした財前だったが、最後の最後は医者としての本分に立ち戻る。あらゆる面で遅かったのだけれど。
初読時は、医療過誤についても財前が絶対的に悪いと感じていた。でも読み返してみると、これで医者が悪いとされたらやりきれないかも、と思うことも。
もしも財前が手術後に一回でも患者に面会し、家族にも優しい言葉を掛けていれば訴えも起こらなかった気もする。実際家族も、「患者に対して不誠実な、人間味のない診察しか」しないことを一番問題視していたわけだし。
第二審結審後からの急展開、最後のページまでは他の用事が一切できないほど夢中に読んだ。名作。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年9月3日
読了日 : 2020年9月3日
本棚登録日 : 2020年9月3日

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