四畳半神話大系 (角川文庫 も 19-1)

著者 :
  • 角川書店 (2008年3月25日発売)
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大学の新入生時に選んだサークルによって、その後の学生生活が薔薇色になるか、はたまた無意に過ごすことになるのか。全体が四話で構成されており、それぞれ別のサークルを選ぶ(人生の選択肢を選ぶ)ことによってストーリーが進んでいきます。

第一話から第二話に移ったとき、涼宮ハルヒのエンドレスエイトのような、時間ループものだったら嫌だなと思っていたら、パラレルワールドだったので一安心。ただし、これが四話続くのはキツイなと思いながら読み進めていたら、第四話でちゃんとオチを用意していました。個性的な登場人物たちが語る多彩な言葉遊びや、海外文学にも理解があるなど、著者は頭いいんだなと感心しきり。

それにしても、人生の選択肢を「もしも」と回想したところで、大して変わらない人生…『輪るピングドラム』でいうところの「きっと何者にもなれない」人生なのだろうということは、年を重ねるほど理解できますけどね。若いときを思い返してみると、主人公と同様に、いろいろ思い悩んで違う人生を夢想していた事が、なんだか懐かしく思い出されて、微笑ましい気持ちになりました。

余談ですが、ジュール・ヴェルヌの『海底二万里』がたくさん出てきます。未読でも問題ないですが、読んでいればより楽しめるでしょう。また
『海底二万里』の他に、スティーブンソン『宝島』、シェイクスピア『リア王』、デフォー『ロビンソン・クルーソー』のあらすじを知っているといいかもしれないです。しかし、どれも名作なので未読の人は一読をおすすめします。

追記:屋台の『猫ラーメン』は、最終話の「八十日間四畳半一周」のタイトルに引用された、ジュール・ヴェルヌ『八十日間世界一周』に出てくる話しが元ネタかもしれない。主人公がインドのボンベイで「ジブロット(兎の白ワイン煮込み)」を注文して食べたら、あまりの不味さに「この兎は殺されるときに、にゃあにゃあと鳴かなかったかね」と給仕頭に問いただす場面があります。こちらの味は、不味かったようですが。

追記:古書店の『峨眉書房』は、李白の七言絶句『峨眉山月の歌』という詩から名付けたのかも知れない。ヒロインの明石さんの嫌いな「蛾」と峨眉山(中国四川省の仙人が住むと言われる山)の「峨」に絡めているのでしょう。明石さんは、古書が好きなので対象的ですね。あと、峨眉(蛾眉)の美人であったり、峨眉山の「眉」は眉唾物の意味で捉えると、本作がより味わい深い作品であるように思えてきました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月28日
読了日 : 2023年12月27日
本棚登録日 : 2023年12月24日

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