田園交響楽 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1952年7月17日発売)
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本棚登録 : 859
感想 : 102
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小品ながら主人公である牧師の、葛藤し悲劇に至るまでの道程をきれいに描いた作品。さまざまなアイロニーがこの作品にこめられていて、そうした対立を日記という体裁をとりながら赤裸々に明らかにしていく文体が魅力的だ。
ひょんなことから拾った無知で汚く盲目な少女ジェルトリュードを、牧師が引き取り自分好みの教養を与え始めたが、美しく知性豊かに育ったジェルトリュードと相思の恋愛感情を持つにいたるという少女愛。これに所帯疲れし細かいいさかいが絶えないが牧師の行動の行く末を見抜いている妻アメリーとの距離感と、キリスト教教義にパウロ的厳格さを求めて父と一線を画す長男ジャックのジェルトリュードへの想いが交叉し、牧師の苦悩を深めていく。その中心にいるジェルトリュードは牧師の恣意的な導きもあり純粋な心を持つ美少女であったが、開眼手術が成功すると同時に真実を知る・・・。
「恋は盲目」というお題がぴったりのラストだが、物語を通して救いだった盲目のジェルトリュードの純粋さが、ええっ!そうなるか!?とびっくり。うーむ。この急転直下の悲劇的展開で、実は牧師以外は皆、救われたことになるのかな?
雪深いが春には緑いっぱいになる山村背景が、この物語の展開によく合っている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説など
感想投稿日 : 2012年9月16日
読了日 : 2012年9月16日
本棚登録日 : 2010年1月23日

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