2016年1月13日
「あの子がいたら」繰り返されるこの老人の言葉には老いた身体ひとり過酷な海で闘う慄き、でも胸を張らにゃいかんという引き攣る左手を叱咤する意地、そんな年老いたものが胸に持つ弱さと強さがせめぎあっているようで切なかった。 鮫にやられた獲物の姿から見えるものは、報われない努力のやるせなさではない。帰路についた老人を泣いて迎えるあの子がいるかぎり、骨と皮だけになったとしても、みっしりと熱が詰まった何かを年若い少年に伝えたことだろう。
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