文庫 シッダールタ (草思社文庫 ヘ 1-4)

  • 草思社 (2014年10月2日発売)
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感想 : 10
5

著者が一生を費やした思想を数百円で買えるのが小説だ、なんて文をどこかで読んだが(そしてそれが正しいとは必ずしも思わないが)、これはまさにそんな本だ。まだ若く未熟で傲慢な私ではとても知り得ない境地を教えてもらった。

主人公は若い頃、とんでもなく優秀だった。出来ない事は無く、現状に満足できずに家を出た。その後も持ち前の才でもって教義を得、富を得、愛を得た。しかし成功の果てでふと自分の醜さに気づき、今まで見くびっていた人たちの美しさを知った。そうして全てを捨てて隠遁生活を送る主人公だが、そこで偶然息子と出会う。どうしても息子と分かり合えなかった主人公は、自分にも得られないものがあると知り、自分の弱さを知った。ついに息子に出て行かれた時、かつての父の気持ちを知り、自分の罪を知った。同時に、輪廻の中でいかに人が無力であり、万物流転の悟りに達する......

人生とは、何かを身に付けたり達成したりするほどに、それまでの自分の愚かさに気づいていくものなのだろうか。逆に言うと、自分の愚かさに気づけていないという事は、何も得られていないということ...?
人生の各ステージで感じ方が違うことは請け合いで、折にふれ読み返したい本だ。

原文の詩的な文体を再現、とのことだったが私には詩的というよりも単に平易に感じた。他の訳出もあれば読みたいところだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 購入
感想投稿日 : 2018年8月30日
読了日 : 2018年8月30日
本棚登録日 : 2018年7月22日

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