騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

著者 :
  • 新潮社 (2017年2月24日発売)
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感想 : 735

直喩や隠喩の数々、性愛・肉欲、変わった名字、知らない音楽、怪しい実在……。おそらくちゃんと読んだ村上作品としては『1Q84』に続いて2作目である。タイトルに惹かれて手に取ったが予備知識なしに読んだので、想像していたような中世やヨーロッパ世界の雰囲気は感じず、かといって現代社会の喧騒からも離れた、意識の隙間を刺してくるような印象を持った。正直、村上作品は好きになりきれないのだが、面白くないかと問われたら間違いなく面白い。とくに今回は絵画を題材にしていたので心惹かれた。
小説だが、絵師の話。挿絵も一切なく、この世に実在もしない絵画について、あらゆる角度から文字で描かれる。まさに「実写化殺し」の作品(うまいこと言ったつもり)。一度その手の話を考えたことがあるが、生成AIで挿絵を入れれば耳目を集めやすそうだと考えていた自分を恥じる。
結局、どんな絵なのかは読者が想像するしかない。無限の可能性。ならばいっそのこと、本書を読んだ体験が、どこかに自分を導いてくれると信じたほうがいい。騎士団長が実在したのを信じたように。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 難題に直面した平凡なやつ
感想投稿日 : 2024年2月2日
読了日 : 2024年1月30日
本棚登録日 : 2024年2月1日

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