おもいでエマノン: 〈新装版〉 (徳間文庫 か 7-4)

著者 :
  • 徳間書店 (2013年12月6日発売)
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感想 : 28
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読んだのは1983年刊の単行本。

【感想】
・長年気になっていた作品をようやく手にした。
・鶴田謙二さんのファンなので彼の絵がカバーの文庫本をと思ったのだが最初の形で読みたくもあったので単行本を。カバー絵は新井苑子さん。一九八三年、まだ活版印刷の時代。本って感じがする。
・今となってはちょっぴり古くさい感じはする。
・「キノの旅」の原型って感じもある。
・三十年前に読んでたら耽溺してたかも。

【一行目】一九百六十七年といえばジェミニ計画が一段落した翌年で、まだアポロも月に着陸していなかった。

【内容】
・地球に生命が誕生してから現在までの記憶を持っているエマノンと、彼女に惹かれた男たちのせつないお話。
・不死者譚もののバリエーションのひとつと言える。
・大型フェリーでエマノンと出会った青年。
・事故でケガをしエマノンから輸血を受けた少年。
・記憶を失ったエマノンと結婚した男。
・人類を超えた能力を持つ少年。
・vsコンピュータ異星人。
・超能力者コンビ。
・放送局のアナウンサーと石油備蓄基地建設予定地にはえてきている植物たち。

▼エマノンについての簡単なメモ

【アイオン】エマノンと同じくすべての記憶をもっている植物。「永遠の時」という意。エマノンの知り合い。
【猪部一雄】肥乃国日報文化部芸能欄担当の記者。裏のない性格で飄々としている。
【エド】サンデイの夫、トミーの父。
【エマノン】だいたい粗編みのセーターとジーンズを身に付けナップザックを背負っている若い女。《私は地球に生命が発生してから現在までのことを総て記憶しているのよ》「おもいでエマノン」p.18。そして記憶の重みにうんざりしている。昭和二十五年生まれ。最初の話の時点で十七歳。娘が生まれたら記憶は娘に受け継がれ元のエマノンには残らない。
【エマノンの名前】no nameの逆さ読みらしい。
【邑上】九肥放送のVTR編集室勤務。大柄で繊細さとズボラが同居している男。「ワイドおはよう列島」というキー局発信の番組で鉈地英子と組むことになった。
【学生】名前はわからない。最初のエピソードでエマノンと出会った青年。SFが好き。ずっと後にエマノンと再会するが。
【片岡雅子】九肥放送のアナウンザーだったがある日突然マイクの前でしゃべれなくなって今は資料室勤務。
【神月潮一郎】初めてエマノンと会ったときどういう者であるかをを看破した傲慢で酷薄な高校生。わかってしまう能力とケガをしてもすぐ治る肉体を持っている。
【ガリオン】コンピュータ。意志が感じられる。
【記憶の引き継ぎ】娘が生まれたらその娘に記憶は移行してしまい母には残らない。ということは「生命の記憶」そのものがエマノンという存在なのだろう。
【傷つける】《本質的に彼女には、決定的に他人を傷つけることができないのだ。》「とまどいマクトゥーヴ」p.119
【サンディ・ペイジ】新しい人生を送ろうとしている女。トミーという息子がいる。
【晶一】セラピーにかかっている瞳の大きな少年。出生前の記憶を持っている。両親が死んだ交通事故のときエマノンから輸血を受けた。《でも、晶一くんはほしになったんだわ。願いがなかったじゃない。》「さかしまエングラム」p.60。
【ダウジング】エマノン特殊能力のひとつ。道具なしでダウジングできる。砂漠で水を見つけるのも簡単!
【田口】セラピスト。晶一を治療している。
【旅】《エマノンは記憶の原初からずっと、旅を続けているのだった。理由など見当たるはずもなかった。そらはエマノンにとって本能なのだ。》「とまどいマクトゥーヴ」p.120
【丹下丈二】創業以来九肥放送勤務していたが取材中の事故で退職したらしい老人。今は酒びたりの日々。
【ツチノコ】美郷健が高校教諭をしていたころのアダ名。ツチノコに似ているからとか。今はJ・K・インダストリィ傘下の企業をやっている。
【トミー・ペイジ】サンディの息子。
【鉈地英子】ローカル局、九肥放送報道局のアナウンサー。天草に行く途中のバスでエマノンと出会う。エマノンと同じE・Nというイニシャル。
【ヒデノブ】予知能力者。ヨシフミと組んでいる。未来に起こることが全て書かれている一冊の本を持っている感じで読めばなんでもわかるが、決定された運命を自分がなぞるだけだと悟りヒデノブはなるべく読まないようにしている。エマノンとは真逆の方向の能力者。
【古橋】東阪石油の備蓄基地建設のための駐在員。いろいろ苦労している。
【フレデリック・F・フリードマン】サンデイの父、トミーの祖父。〝狂気の3F(ルナティック・スリーエフ)〟と呼ばれた有名な研究者。宇宙生物学を研究していた。ガリオン・ラボを開いた。
【マクトゥーヴ】「運命づけられたもの」とか「予定されたもの」といった意味。神月潮一郎が自分のことをそう評した。
【ヨシフミ】精神感応力者。元暴走族だがケガをしてオートバイの運転ができなくなり今はヒデノブと組んでいる。
【良三】五十間近の男。フリーのシナリオライター。1973年に記憶を失ったエマノン(荏麻/えま)に会い結婚した。その娘が荏衣子(えいこ)。
【歴史】《歴史って、人類や生命全体の〝おもいで〟に違いないのよ》「おもいでエマノン」p.30
【老人】良三が荏麻と名付けたエマノンの父親。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 好感あり
感想投稿日 : 2021年1月17日
読了日 : 2021年1月17日
本棚登録日 : 2021年1月4日

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