貨幣論などで著名な経済学者岩井氏による本です。本とは言っても全編通して対談形式になっています。雑ぱくな感想について。まず対談形式であればさぞ読みやすいだろうと思って読み始めましたが、内容がかなり高度、というか空中戦すぎて理解しながら読み進めるのにそこそこ時間がかかりました。また主役が岩井氏で「聞き手=三浦雅士」となっていますが、三浦氏は「聞き手」の領域を大幅に超えて「話し手」にもなっていました。これは良かったと思う箇所もありましたが、「しゃべりすぎでは?」と感じる箇所も多々ありました。個人的に岩井氏の主張にもっと誌面を割いてもらいたかったので、聞き手は聞き手らしくもっとシンプルに切り返してもらった方がありがたかったです。
序盤は読むのに苦戦しましたが、面白いもので、中盤くらいからはだいぶペースアップしました。まず岩井氏の主張が一貫していることで、「門前の小僧習わぬ経を読む」ではありませんが、だいぶ私(門前の小僧)の頭の中にも入っていきました。
岩井氏の主張は何かといえば、言語・法・貨幣は自己循環的に成立していること。つまりこれらによって社会が存在しているのですが、その存在基盤とも言えるこの3つは実は根拠が無く不安定なものだということです。たとえば貨幣であれば、貨幣需要がものすごく高まるとデフレ(恐慌)になり、貨幣需要がものすごく低くなるとハイパーインフレーションになったりする。そしてこの不安定な資本主義を補完しているのが、市民社会であって、それはカントの定言命題としての普遍的な倫理をベースにしたものである、という感じです。著者の主張が正しいかどうかは私のレベルではまったくわかりませんが、とても面白く感じました。そういう風に物事を見ることも出来るのか、という発見があったという感じです。繰り返しますが、「空中戦」の議論が多くて最初は良くわからないかもしれませんが、だんだん著者の言いたいことがわかってきますので、我慢して最後まで読めば多くの気づきがあるかと思いました。
- 感想投稿日 : 2023年4月30日
- 読了日 : 2018年1月24日
- 本棚登録日 : 2023年4月30日
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