アドルフ (岩波文庫 赤 525-1)

  • 岩波書店 (1965年8月16日発売)
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本棚登録 : 242
感想 : 29
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恋に恋し続けた男の悲劇/喜劇、とわたしには思えた。人一倍孤独や独立を欲していながら優柔不断で弱い性格が一見優しさのようで実際はただナヨってるだけという。白黒つけられないところが政治には向いてるのかもね。自覚も反省もしてるけど変えられない部分は誰と出逢っても一生変わらないのだろう。

しかしエレノール視点の物語があったとしたら、彼女にとってはハッピーエンドとも言えないか?好きでもない男爵に囲われて嫌々社交界に居させられるよりは、自身以上に愛する男と一緒に暮らし、その腕の中で死を迎えることは本望だったとも言える。もちろんそれが彼女の思い描く幸福ではなかったろうが、苦しめば苦しむほど以前のつまらない日々より生の実感も得ていたと思う。いわゆるダメンズ製造機かもしれないが、彼女の心が清いからこそどんなに複雑でも見捨てられない部分があったんじゃないかな。

お互いにお互いを不幸へと追いやる関係は破綻しているがコンスタンは所帯を持とうが持たまいがそういう恋しかできなさそう。でも良い恋愛小説。令和になって従来の恋愛至上主義へのアンチテーゼ作品が増えてきた気がするけど、これはその先駆けの先駆けだったのであろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年2月6日
読了日 : 2022年2月6日
本棚登録日 : 2022年2月6日

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