手仕事の日本 (岩波文庫 青 169-2)

著者 :
  • 岩波書店 (1985年5月16日発売)
3.62
  • (18)
  • (52)
  • (53)
  • (4)
  • (2)
本棚登録 : 737
感想 : 44
5

一緒に全国行脚して色んな工藝を巡ってる気分を味わえて、めちゃ楽しかった〜!烏山が美しい馬具を作るところだったなんて知らんかったぞ?今となっては検索しても出てこいものもけっこうあった一方、ちゃんと残ってるものが多数あって希望を感じた!

実用品の美しさとは何か。それは実際の生活での使用に耐えうる丈夫さや使いやすさをともなった「健康な美」。健康な美こそ一番美しい!なぜなら、背後に自然の法則が働いているから。法則に従順である、この「他力の美しさ」は人間の視点からすると「不自由」「束縛」という嘆きとも捉えられるが、自然の視点からすると一番当然な道を歩くということ。むしろ「他力に任せ切るとき、新たな自由の中に入る」。

芸術品と異なり、工藝品は作った人の名を記したものはない。職人たちは、名で残ろうとするのではなく品物で勝負している。たとえ作った人が学のない無名な人で、作るものが普通であったとしても、大きな伝統の力に支えられているということを忘れず、名もないものの美しさこそもっと評価すべきではないか。

伝統を尊ぶということは、ただ昔を繰り返すということではない。伝統は活きたものであって、そこに創造と発展がなければならない。伝統を尊ぶということはむしろ連なってきた樹木の根をを更に育てて名木にするためである。

もしも我々の生活が醜いもので囲まれているなら、その暮らしは程度の低いものに落ちてしまう。一国の文化はその国民の日々の暮らしに最もよく反映される。生活を深いものにするためには、どうしてもそれは美しさと結ばれねばならない。生活の中に交えることでかえって美が深まり、確実なものになる。それこそが実用の美、健康の美。

「我々は日本の固有のものをもっと尊ぶべきだが、それは他の国のものを謗るとか侮るとかいう意味を伴ってはならない。真に国民的な郷土的な性質を持つものは、お互いに形こそ違え、その内側には一つ触れ合うものがあり、お互いに近い兄弟ともいえる。世界は一つに結ばれているものだということを、かえって固有のものから学ぶ。」

柳さんも朝鮮の文化に触れて、かえって日本のさまざまな美、民衆が創造主体の美が見えてきたということで、外に触れて内を知るというのはどの時代にもあるんだな〜と感じた!いつか日本の手仕事令和ver.を刊行したいと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年3月14日
読了日 : 2024年3月11日
本棚登録日 : 2024年3月11日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする