WOLF ウルフ

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2015年2月27日発売)
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感想 : 20
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インスタで発見し【秩父オオカミ】に関するストーリー内容で気になった『WOLF』(柴田哲孝)。

今までに読んできたオオカミ本で得た【絶滅生物のロマン】を持ちながら、

本書で【人的被害をもたらすようになったオオカミへの対処】について読んだので、

なかなか複雑な気持ちになりました…。

他にも思う事はいろいろ以下◯点。

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❶オオカミに関する場所への旅行の振り返り

《三峰神社》《大神神社》《大台ケ原》《吉野桜》がオオカミを知る動きの中で出てくるのですが、とても懐かしかった。

旅行ガイドブックではなく本をキッカケとする旅ができるようになったんだよなとしみじみ…。

❷日本行政について

「世論を気にし、何か事故があったら誰が責任を取るのかと責任論に終始する。そして、最後はいつもうやむやにされる。」

という文章が幾度か出てきて、オオカミ以外の事でモヤッとした。

❸ニホンオオカミの新たな情報GET
「元来、ニホンオオカミには、その分類について二つの学説が対立していた。北海道のエゾオオカミに近いハイイロオオカミ(タイリクオオカミ)の別亜種とする説と、まったくの別種とする説である。現在は別亜種説が主流にはなっているが、ニホンオオカミを記載したオランダの動物学者コンラート・J・テミンクや今泉吉典は独立種にすべきと主張していた。
だが、"ニホンオオカミ"が二種類存在していたとしたら……。」

…と読んだ時は面白いと思ったなぁ。

小説は「IF」について読めるから面白い。


❹生態系バランスの難しさ

【生態系を守るための外来種移殖】が【生態系を破壊する元凶】になってしまった例を初めて知ったかも知れない。

(例: ⑴サソリの駆除を目的として小笠原に移入されたオオヒキガエル→貴重な昆虫や小動物を喰い荒らした。
⑵ ハブ対策で沖縄に放獣されたマングース→ヤンバルクイナなどの天然記念物絶滅危惧の原因


❺日本人の肉の呼称
「花札で10月の紅葉には鹿が合わされるだろう。だから鹿肉を"モミジ"と呼ぶんだ。」

……と超貴重な情報入手した。花札だったのか!!!

❻キノコ情報

「ナメコが群生する場所の近くには、マイタケが見つかることが多い。」

…と物語中にキノコ狩りが出てくる本を読んだのは初めてかもしれない。

❼強い猟犬を作る方法

昔はよくやってたそう。

欧米では、75%以上オオカミの血が入った狼犬を"ハイパーセント"といって特に高額で取引され、

FCI(国際畜犬連盟)認定はサーロス・ウルフホンドと、チェコスロバキアン・ウルフドッグの二種のみとのこと。

さらに本書の事件原因であるオオカミ種との交配について調べてみたら、

『狼 その生態と歴史』(平岩米吉)によれば、犬と狼の交配の企画は、すでに4世紀ごろからあった事をアリストテレスが書いていたらしい。

❽動物による人的被害

その根っこを辿っていくと、食糧を取り尽くしてしまう人間に行き着くというのはなかなか複雑な気持ちです…。

❾秩父という土地

「埼玉県内から北は群馬県、西は長野県、南は東京都の奥多摩町にまで広がる秩父山地はあまりにも広大」と読むと、

三峰神社に行くために訪れたエリアはほんの一部だった事がわかった。

そして「秩父周辺は石灰岩の鉱山が多い。つまり、石灰質の山です。このような場所には鍾乳洞と呼ばれる石灰洞……つまり、洞窟が多いんです。」と読んだ時には、

秩父にしろ、フジイチにしろ、貴重な鍾乳洞に行けてない事を痛感。行きたい…。

さらに「秩父市は、京都祇園祭、飛騨高山祭と並ぶ日本三大曳山祭のひとつ"秩父夜祭"の本場だった」と読んで、

面白そうなお祭りがある事を今更ながらに知りました。

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読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月2日
読了日 : 2023年8月2日
本棚登録日 : 2022年12月30日

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