戦前に書かれたものであるが、その本旨については、今も納得のいくものである。
文語から、口語へ、現代仮名遣いへ以降する時代の香りというか、匂いというかが伝わってくる。
この書は、われわれ日本人が日本語の文章を書く心得を記したものである
言語は万能はものでないこと、その働きは不自由であり、時には有害なものであることを忘れてはならない
華を去り実に就く、のが文章の本旨、余計な飾り気を除いて実際に必要な言葉だけで書く
実際のことが理解されるように書こうとすれば、なるべく口語に近い文体を用いるようにし、俗語でも、新語でも、或る場合には外国語でも、何でも使うようにしなければならない。
現代の口語文では、専ら「分からせる」「理解させる」ということに重きを置く。
はっきり読者に伝わるのはできるだけ無駄を切り捨てて、不必要な言葉をはぶいているから
文章の条件には、分からせるという目的も、長く記憶させるという目的もある
黙読といっても、結局は音読している
文章を声に出して暗誦し、それがすらすら云えないようなら、読者の頭に入らない悪文である
日本語は、かならずしも、主格(主語)あるを必要としない
多く読むことも必要ですが、1つのものを繰り返し繰り返し、暗誦するぐらいできることも大切です。
文章の要素は6つある
①用語
わかりやすい語をえらぶ
使い慣れた語を使う
耳慣れた外来語や俗語を選ぶ
同義語をたくさん知る
②調子
日本語には2文をつなぐための、関係代名詞というものはない
読んでもらうために、わざとごつごつした調子で書く
③文体
④体裁
息継ぎのタイミングが、句読点を打つところ
⑤品格
言葉使いを粗略にしない
敬語や尊称をおろそかにしない
⑥含蓄
饒舌を慎む
喜怒哀楽をあまり大げさに表現しない
文章読本 完 改版
著:谷崎 潤一郎
紙版 中公文庫
目次
1 文章とは何か
〇言語と文章
〇実用的な文章と芸術的な文章
〇現代文と古典文
〇西洋の文章と日本の文章
2 文章の上達法
〇文法に囚われないこと
〇感覚を研くこと
3 文章の要素
〇文章の要素に六つあること
〇用語について
〇調子について
〇文体について
〇体裁について
〇品格について
〇含蓄について
解説 吉行淳之介
ISBN:9784122025356
出版社:中央公論新社
判型:文庫
ページ数:240ページ
定価:571円(本体)
発行年月日:1975年01月10日初版発行
発行年月日:1996年02月18日改版発行
- 感想投稿日 : 2023年10月18日
- 本棚登録日 : 2023年1月3日
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