人物評伝短編集。
表題作は、奥羽の雄に留まらざるをえなかった戦国武将、伊達政宗が遺した漢詩を基に、凄絶な半生と苦渋の感慨を綴る。
死する前年に詠われた句に、窺われる寓意が沁みた。
また、「重庵の転々」は、伊予吉田藩の初代藩主・伊達宗純に重用され、「山田騒動」の引き金となった医者・山田仲左衛門をモデルとしており、仙台藩の宗家から分かれた宇和島藩、さらに支藩の伊予吉田藩の経緯が詳しく述べられ、表題作と併せて奥行きが増す。
他、越後長岡藩士・河井継之助、海援隊隊士・菅野覚兵衛、南画画家・田崎草雲、《賤ヶ岳の七本槍》の一人、脇坂安治(甚内)らが描かれる。
知名度の低い人物を主軸に置いても、格調高く冷徹な筆致でもって、終始、読み手を惹き込む筆力の高さは流石の一言。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説(歴史物・時代物)
- 感想投稿日 : 2019年10月29日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2019年10月29日
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