性と国家

  • 河出書房新社 (2016年11月26日発売)
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本棚登録 : 218
感想 : 21
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とあるロリペドエロ漫画を模倣し、少女に性的暴行をしていた男が逮捕され、その模倣された漫画の作者である漫画家のもとに警察が話を聞きに行く、ということが起きた。その漫画家は自身のツイッターでことの次第を説明したまでは良かったが、あろうことか一連のツイートの後に該当漫画で被害者の女児が「なんで私だけ」と言いながら泣いている場面のコマを載せた。なんで自分だけ警察に来訪されねばならないのか、ということを表現したもの思われるが、そこに被害者への配慮や心配はまったくなく、どう見ても茶化している様にしか見えなかった。そのツイートについたファンからのリプライも、「このタイミングでそれは草生えますよw」とか、被害者をなんだと思っているのか目を疑うものばかりだった。
私は漫画もアニメも好きだし、表現規制には反対だ。残酷な描写や性的な描写は、その作品を創り上げる上で必要なものであれば規制されるべきではないと思う。ロリペドエロ漫画にしても、一部の愛好家の間だけで楽しんでいるなら問題ないと思っていた。しかし、現実に被害者が出たにも関わらず、彼女たちへの配慮もないどころか事件を面白がるようなことを言いながら、漫画への規制反対だけを声高に条件反射のように主張するオタクたちを見ていると、本当にこれでいいのかと思うと同時に、やはり(全員とは言わないまでも)日本男性の性に対する感覚は歪んでいるのではないかと思わざるを得なかった。また、作品が目を背けたいようなものでも描いている本人はまともなのだろうと思っていたが、ロリペドエロ漫画を描くような人はやはり女性を玩具にしか思っていないんじゃないか、という偏見も少し芽生えてしまった。
前置きが長くなったがそんなことがきっかけで本書を読んでみたが、やはり世界的に見ても日本の性に対する感覚はちょっと異常なのかもしれないとは思えた。ただ、その理由を解き明かすうえでの歴史的背景、政治的・社会的分析の部分がやや少なく、従軍慰安婦や宗教観の話(それはそれで興味深かったが)が多かった。ただ佐藤優氏の女性、フェミニズムに対する考え方はうなずける部分が多く、もっと読みたいと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年6月16日
読了日 : 2017年6月16日
本棚登録日 : 2017年6月16日

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